スーツケース・オブ・スティール

28 Oct 22

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スーツケース・オブ・スティール

ジャーナリストのジェレミー・ホワイトがグローブ・トロッターのイノベーションのルーツを探り、カーボン・ファイバーの新しいコレクションが、グローブ・トロッター独特のクラフトマンシップから生み出された軌跡を辿ります。

現代の企業がイノベーションの歴史を語るとき、多くの場合(実際のところほとんどの場合)彼らが言及しているのは、過去5年、いえ10年に及ぶ期間に研究開発部門が成し遂げた成果についてです。しかし、グローブ・トロッターが自社のイノベーション・ジャーニー(通常は実際にイノベーション企業であることの公正な証し)を語ることはめったにありません。そのため、多くの人がこの事実について知りませんが、グローブ・トロッターがスーツケースの品位を損なうことなく重量を大幅に軽量化することにより、ハンドメイドのスーツケースのデザインを根本的に変えるような新しい素材を手に入れたのは、5年や10年の間ではなく、125年前のことなのです。

 

ヴァルカナイズド・ファイバーボード(通称 ヴァルカン・ファイバー)は、1859年に英国人のトーマス・テイラーにより発明されました。紙と木綿と木材パルプから成形されるファイバーボードの層は、特別な方法で接着し("「ヴァルカナイズ」し")、特殊な溶液に浸してから、目的の厚さに圧縮して作られます。グローブ・トロッター社は、ヴァルカン・ファイバーが極めて弾力的で、アルミニウムよりも軽く、革よりも頑丈であることに気付き、1902年にはこの新しい素材のスーツケースへの使用特許をいち早く取得しました。これにより、同社の職人は一挙に革装の競合相手を凌ぐことになりました。グローブ・トロッター社の1912~13年カタログで有名な広告に描かれているのはハンブルクのハーゲンベック動物園の象です。キャビントランクの上に乗り、その破壊加重は8トンであるという主張を証明しています。

その後、多くの進歩とコラボレーションが続き、そこにはもちろん、デイヴィット・シュリグリーグッチポール・スミス そして ジェームズ・ボンドなどが名を連ねます。しかし、最近は125年前の高揚期を懐古するものが続きます。新しい「センテナリー・カーボン・コレクション」はヴァルカン・ファイバー製ではなくカーボン・ファイバー製の3種のキャリーオンスーツケースからなります。このコレクションは、オックスフォードシャーのバンバリーに拠点を置くモータースポーツ・エンジニアリンググループであるプロドライブとのパートナーシップによって誕生しました。このチームはアストンマーティンなどの企業と車を製造し、ル・マン24時間レース、エクストリームE、世界ラリー選手権などのシリーズで出走しています。

興味深いことに、カーボン・ファイバーには、ツイル(多くの人が目にしたことがあると思われる波状の綾織り)、フラックス(持続可能な天然繊維を使用)、フォージド(鍛造)の3種類があります。プロドライブのビジネス開発担当取締役のマット・ブラッドニーは、「フォージドは実際にはチョップド・ファイバーで、バージン・カーボン・ファイバーを使用しています。裁断台からゴミが出ないのは大きなメリットです。織り方の方向を気にする必要がないからです」と説明します。

このフォージド・カーボン・ファイバーは実はランボルギーニのために開発されたもので、グローブ・トロッターが再度生かすチャンスを見いだしました。「カーボンの強度は重量比較ベースでスチールの2倍です」と言うブラッドニー。「ですから、グローブ・トロッターのスーツケースはスチール製よりはるかに頑丈です。」また、プロドライブがグローブ・トロッターと共同開発した新しいスーツケースは、強度だけでなく十分な柔軟性も備えています。「カーボン・ファイバーは通常、柔軟ではなく、硬くて曲がりません。ですから、真っすぐでいようとする素材をしなやかな入れ物に作り直そうとするのは、それ自体挑戦でした」。

ヴァルカン・ファイバーからカーボン・ファイバー製の特別企画のスーツケースに移行することで、グローブ・トロッターのラゲッジから職人技の品質が失われるのではないかと心配している人に対し、この「センテナリー」モデルは実際のところヴァルカン・ファイバーを使用したモデルよりもつくり上げることが困難かもしれないとブラッドニーは教えてくれます。

「ヴァルカン・ファイバーのスーツケースは、平板状の素材を用いて作られます」とブラッドニーは言います。「裁断され、折り曲げられ、職人が調整することが可能です。しかし、カーボン・ファイバーは固定金型により成形するので手作業には制約があり、毎回正確につくらなければなりません。さらに、1台生産するのに、塗装を含め、1日半ほどかかります。ヴァルカン・ファイバー製よりもかなり時間がかかっているのではないかと思います」。

「カーボンは金型の中に、板状に薄く重ねていかなければなりません。2~3層が硬化するのに1台で4時間かかります。その後、CNCマシンできれいにカットしてから塗装します。この工程が手作業で行われます。ヴァルカン・ファイバー製とは異なりますが、これもやはり手作業工程です」。

ジェレミー・ホワイトは、Wired UKのエグゼクティブ・エディター。「カーボン・ファイバー・コレクション」は 2022年11月2日(水)よりグローブ・トロッター各ストアにて展開開始 (入荷状況により、店頭にて製品をご覧いただけない場合がございます。詳しくは各ストア店頭スタッフまでお問い合わせください。)

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