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YATARO
MATSUURA
Essayist
松浦 弥太郎
“手作り感のある無骨な道具のようなケース”
OVER
100 YEARS
OF HISTORY
1897年創業。その100年をこえる歴史の中で本物を知る著名人たちに選ばれ続けているグローブ・トロッター。品格のある佇まい、使い込むほどにその人ならではの歴史が刻まれ、深まっていく魅力。そうした本物のラゲッジは、旅先での経験を特別なものにしてくれるだろう。
知人から譲ってもらった
最初のGTとの思い出
これまでに多くの場所へ旅をし続けてきたエッセイストの松浦弥太郎さん。松浦さんといえば、自身の書籍や雑誌などのコラムを中心とした活動を通して、その豊かで美しいライフスタイルに多くの人々から支持を集めているなど、もの選びの目利きとしても知られている。そんな松浦さんが、20代の頃から旅をするときに持ち続けているラゲッジはグローブ・トロッターだという。
「僕がグローブ・トロッターを知ったのは、21か22歳のころでした。その頃、とてもお世話になったある知人がいまして、その方がロンドンに出張に行ったとき、買い物をたくさんしたそうで、お土産を持ち帰るために現地でスーツケースを買ってきたのです。濃いネイビーのとても大きなグローブ・トロッターのスーツケースで、キャスターはついていませんでした。その頃の僕は、アメリカと日本を行き来しているような時期だったこともあって、スーツケースといえばアメリカ製のものしか知らなかった。ロンドンから来たその大きなネイビーのスーツケースは、僕が知っていたアメリカ製のものとは違って、紙を圧縮させた独特な素材(ヴァルカン・ファイバー)ならではのイギリスらしいクラフト感に惹かれました。知人はお土産を入れる箱代わりのように使っていて、その道具っぽさにかっこいいなと思ったことを覚えています。
あるとき、僕がアメリカに行くときにその大きなスーツケースを貸してくれたのです。僕はその頃、アメリカの本屋をめぐり、探している本を見つけると買って日本に運ぶことが多かったので、大きなスーツケースはちょうど良かったのです。キャスターがないために、キャリーカートにロープで括り付けて運んでいました。いろいろなものを入れて、アメリカやパリ、ロンドンやスコットランドなどたくさんの場所へ旅をしましたね。グローブ・トロッターを使い始めてから気づいたのですが、ホテルの人がちゃんと荷物を扱ってくれたり、持ってくれたりするんですよ。特にヨーロッパを旅しているとグローブ・トロッターのケースへのリスペクトを感じました。
ずいぶんそのケースを使わせてもらっているうちに、いずれ知人から『気に入っているのならあげるよ』と言っていただけて、自分のものとなっていました。そんなある時、ニューヨークの路上でタクシーを捕まえようとしていると、そこに15トンくらいある大きなトラックが突っ込んできたんです。僕は無事だったのですが、近くに置いていたその大きなスーツケースは踏み潰されてしまいました。最後はバラバラになってしまったけれど、そのケースとは一緒にいろいろなところへ旅をしたので、今となってはそれも良い思い出になっています」。
“スーツケースを置いたときの
景色がいい”
3泊ほどの旅行にちょうど良い
クラシックなデザインのケース
知人から譲り受けた大きなキャリーケースを失ってからしばらくはアウトドアブランドのダッフルバックを使い続けていたという松浦さん。だが、グローブ・トロッターの存在が忘れられず、10年前に自身で購入したのが、今回撮影したサファリシリーズのスモールキャリーオンだ。
「3泊くらいの旅行や出張にちょうどよく、機内に持ち込めるサイズのケースが欲しいと思って買ったのがこのケースです。最近は出張に行くにしても荷物をあまり持たなくなったので、これとトートバッグ1つでいろいろなところに旅をしています。僕にとってグローブ・トロッターというと上質な道具というイメージがあるから、クラシックなスタイルのものが良いなと思ってこれを選びました。鋲が打ってあったりと無骨な見た目ですよね。シンプルな箱に取っ手をつけたような、ところどころに手作り感があり綺麗すぎない。そういうところが気に入っています。これも10年間でロスや中国、台湾、デンマークから日本国内の多くの場所へ持って行ったかな。宿に泊まって、部屋に入り、グローブ・トロッターのスーツケースを置いたときの景色も素敵なんですよね」。
あまり空港で預けることも少ないという松浦さんのケースは、10年使い続けていても状態がよい。だが、レザーのパッチやハンドル部などは経年変化によって飴色になり、擦り傷も雰囲気の良いアジを出している。
今回のインタビューでは、松浦さんが実際に旅に持っていく物をスーツケースに入れてきてもらった。このグローブ・トロッターのケースには、どんなものを入れて松浦さんは旅をしているのか。
「絶対に持っていくものは、数冊の本、室内で履くサンダルとランニンググッズやデジタルガジェット。あとは、セラピーボールというマッサージ用具は、移動中やホテルで足裏や背中のマッサージをしたりするのに重宝します。あとは、傘をあまり持ち歩かない僕にとって必需品のアークテリクスのゴアテックスのジャケットも必ず入っているアイテムです。こうやって、ものをたくさん入れてもグローブ・トロッターは片開きなので、ホテルや空港で開いた時に品がいいですよね。それに、ファッションスタイルとのバランスも大切です。僕自身の旅の装いとこのケースの相性が良いと思って使い続けています」。
松浦 弥太郎
YATARO MATSUURA
Essayist
エッセイスト。クリエーティブディレクター。暮しの手帖編集長を経て、「正直、親切、笑顔」を信条とし、暮らしや仕事における、たのしさや豊かさ、学びについての執筆や活動を続ける。著書に「今日もていねいに」(PHPエディターズ)「しごとのきほん くらしのきほん100」(マガジンハウス)「エッセイストのように生きる」(光文社)など多数。
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クラシックなケース
1920年代初頭のアフリカへの旅にオマージュを捧げたデザインのサファリシリーズ。コーヒーブラウンカラーは、サファリシリーズを象徴する色味である。ナチュラルカラーのレザー部分との相性も美しく、クラシックな佇まいとなっている。機内持ち込みも可能な小型のサイズは、週末の小旅行に最適。