ビジネスを象徴するバッグ:アタッシェケースの歴史をブリーフィング

25 May 23

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ビジネスを象徴するバッグ:アタッシェケースの歴史をブリーフィング

グローブ・トロッターのアタッシェケース(アタッシュケース)は、まさに究極のビジネスアクセサリー。実用性を極める一方で、往時を想起させるスタイリッシュなデザインは、ひと目でエレガンスと信頼性と高い格式を感じます。

アタッシェケースとは?

アタッシェケースなら聞いたことがあるという人でも、正確な定義まではご存知ないのでは? – 実はアタッシェケースは、思っている以上に身近なものなのです。例えばブリーフケースと聞いて皆さんがよく思い浮かべるのが、古くからビジネスマンに愛用されてきたアタッシェケースです。詳しく説明しましょう。

そもそもアタッシェケースとは何でしょうか。端的に言えばシンプルな四角い鞄で、特徴として上部にハンドルが付き、底部にはヒンジが付いていて、鞄を開くとふたつの収納スペースが現れるものです。スチール製または木製の枠の上に固いレザーを張って、頑丈に作られています。

もともとA3の書類を運ぶことが目的だったためサイズもおおむね同じで、A3の書類の束がしっかり入る18×12×4インチ前後にほぼ統一されています。通常、内部にはレザーまたは布のライニングが施され、フォリオと呼ばれる書類袋が付属しており、これを使って内部のスペースを区切ることができます。上部にキータイプまたはコンビネーションタイプのロックがふたつ付いているのが一般的です。

さらに、地面に置いたときにレザーが受けるダメージを極力小さくするため、金属の底鋲を打ったり、鋳型で成形されたコーナーを取り付けたりしています。


アタッシェケースの歴史

あまり知られていませんが、アタッシェケースの最初の祖先はローマ時代の「ロクルス」ではないかと言われています。「ロクルス」は「小さい場所」を意味し、やぎや牛の皮で作ったサッチェル(学生鞄)スタイルのバッグのことを指していました。

サッチェルバッグもまた、数千年前にさかのぼる長い歴史を持ち、時代が下ってポケットが発明されるまでは特に、小物を運ぶ道具として欠かせないものでした(洋服にポケットが付くようになったのは、なんと17世紀になってからです)。

19世紀になると、鞄にもわずかながら変化が起きました。当時、旅はエリート層だけのもので、旅に出るときには重いトランクをバッグマンと呼ばれる荷物持ちやポーターに運ばせるのが当たり前でした。自らの手で荷物を運ぶなど、良識ある紳士のすることではないとされていたのです。一方で庶民たちは何でもポケットに詰め込んで運ぶしかありませんでした。その市場ギャップに目を付けたのが、フランス人のアレクシス・ゴディヨです。

ゴディヨは貧しい階級の出身ながら、現代を代表する発明家として世界に大きな影響を及ぼしています。例えば現在のようなミリタリーブーツを発明したのも彼ですし、靴の左右を区別したのもゴディヨです(そう、ゴディヨが登場するまで何千年もの間、人々は右も左も同じ形の靴を履いていたのです)。

ゴディヨの発明したアウトドア用ケースは、企業の必需品へと変貌を遂げたのです。それ以来、アタッシュケースはビジネスを意味するようになりました。


1826年、ゴディヨはまたひとつ素晴らしいアイデアを思いつきました。重いトランクの代わりに、カーペット生地の袋にヒンジで開閉する鉄製の口金を取り付けた軽い鞄のアイデアです。その発明品は、狩りや釣りに最適だとゴディヨは考えました。狩りや釣りにはかさばる重い道具がたくさん必要で、それまでのトランクで運ぶのは適していなかったからです。

ゴディヨはこの新しい発明品を非常に気に入り、どこへ行くにも持ち歩きました。すると、極めて革新的な鞄だとパリ中の人が注目するようになり、ほどなくしてアタッシェケース(今ではそう呼ばれています)は、都会の街中でも活躍するようになりました。

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当時はまだ電子メールもなく、若い外交官たちはパリ市内のあちこちに書類を届けるために多くの時間を費やしていました。その任務を果たすのに、ゴディヨの鞄が極めて都合がいいとたちまち評判になったため、フランス語で「大使館付き職員」を意味する「アタッシェ」からアタッシェケースと名付けられました。アウトドアを楽しむために作られたゴディヨの鞄はこうしてビジネスパーソンの必需品となり、以来、アタッシェケースはビジネスを象徴するものになったのです。

では、ブリーフケースとは?

アタッシェケースについて詳しく説明してきましたが、少なくとも英国では、アタッシェケースというよりもブリーフケースという呼び名の方が一般的でしょう。では、アタッシェケースとブリーフケースは、厳密にはどこが違うのでしょうか。

ブリーフケースのもとになったのは、J・G・ビアードが考案した「グラッドストーンバッグ」です。かつて4期にわたって英国首相を務めたグラッドストーンの名を取ったもので、彼の自由主義政策を背景に生まれた鞄です。というのは、彼の政策によって、それまで上流階級のものであった旅が一般の英国人にも手が届くものになったからです。ビアードの鞄は、基本的にはゴディヨの鞄を踏襲していましたが、本体にカーペットではなく固いレザーを使った点が異なっていました。

同じころ、ジェレミー・ステニングが箱型の鞄を考案しました。グラッドストーンバッグによく似ていましたが、本体に骨組みとなる枠が入っていました。この枠のおかげで現在のブリーフケースのようにふたつに大きく開くことができ、中に入れた書類が非常に見つけやすい構造になりました。その使いやすさが弁護士の間で人気となり、彼らがブリーフと呼ばれる訴訟書類を運ぶのに使ったため「ブリーフケース」と呼ばれるようになりました。

弁護士はどこでも常に書類にサインをするので、鞄は持ち運べるオフィスのような役割を果たさなければなりませんでした。その要請に応えてブリーフケースは短期間のうちに進化を遂げ、インクや予備の用紙、筆記具類を複数のスペースに分けて収納できる機能的なものになりました。

アタッシェケースとブリーフケースは厳密には何が違うのでしょうか?

アタッシェケースとブリーフケースは同じ意味で使われることも多いですが、厳密に言えば、ブリーフケースは「訴訟書類(ブリーフ)などの書類を入れるために使うケース」全般を指す言葉で、アタッシェケースは「四角い本体パーツをヒンジでつなぎ、開くとふたつの収納スペースになる」という具体的な構造を表す呼称です。

従って、用途をふまえるとアタッシェケースは確かにブリーフケースのひとつですが、ブリーフケースがすべてアタッシェケースであるとは限りません。ブリーフケースには、ポートフォリオケース、メッセンジャーバッグ、トラベルブリーフケースなど、さまざまな人気のスタイルがあります。最近のバックパックも実質的にはブリーフケースだと主張する人もいます。とはいえ、ブリーフケースの形で最も有名なものは、やはりアタッシェケースでしょう。ブリーフケースと聞けば99%の人がアタッシェケースを思い浮かべるのではないでしょうか。

ご存知のように、グローブ・トロッターには古くから社会の指導者たちにアタッシェケースを提供してきた輝かしい伝統があります。大蔵大臣だった当時のウィンストン・チャーチルもそのひとりです。また、映画『007』シリーズにもたびたび登場し、ジェームズ・ボンドだけでなく悪役からも愛用品に選ばれています。

ボンド映画の世界観を表現したスマートなアタッシェケースは、グローブ・トロッターのコレクションとして現在、複数のモデルが販売されています。もちろん、グローブ・トロッターのアイコンである センテナリーオリジナルといったコレクションでも、1897年の創業当時のデザインを踏襲したグローブ・トロッターらしい美しいシルエットのアタッシェケースを用意しています。

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グローブ・トロッターのアタッシェケースはすべて、英国内で職人の手によって作られています。最高品質のレザーのみを選んで特許素材のヴァルカン・ファイバーボード技術と組み合わせ、特徴的なコーナーパッチやスタッズといった細やかなディテールを施したケースは、まさに洗練と堅実さの象徴そのもの。なくてはならないビジネスパートナーとして、生涯にわたってあなたを支えてくれるでしょう。

ゴディヨの時代から、アタッシェケースはステータスシンボルであるとともに、洗練されたスタイルの象徴でもありました。時代と共に世界が多少変化したとはいえ、アタッシェケースの人気は簡単には衰えそうもありません。

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