ロンドン在住のインテリアスタイリストでアートディレクターのトム・オディールさんに、イタリアへの休暇旅行、スクーターでの街探検、旅に必携のラグジュアリーグッズについてお話を聞きました。
Photography courtesy of Tom O’dell
あなたにとって、夢の旅行先はどこですか?
この2年ほど、イタリアのマルケ州にあるトッレ・ディ・パルメという村を訪ねています。
とてもイタリアらしい村で、観光客もそれほど多くありません。
メンズファッションデザイナーのナイジェル・ホール氏が教えてくれたのですが(ホール氏は、ここに家を持っていますよ)、本当に素晴らしいところで、すっかり気に入りました。
坂道を2マイルほど登った丘の上にあり、教会が4カ所、小さい学校がひとつ、カフェが1軒、レストランが2軒あるだけの伝統的な村ですが、住民は、この村に住むことに強い誇りを持っています。
私はインテリアデザイナーとしていつも感動するのですが、この村の人々は、自分たちが過ごす場所を快適に保つために、常に細やかな、しかし押しつけがましくない気配りをしています。
海を見下ろすレストランでは、毎晩、美しいキャンドルを灯し、リネンのテーブルクロスと生花のしつらえを欠かしません。
この店に初めて行ったときは、あまりに完璧なセッティングなので、「これからウェディングパーティーでもあるんだろう」と思いましたが、聞けば、これが普段のセッティングだということでした。
トッレ・ディ・パルメではとてもリラックスして過ごすことができ、その意味ではロンドンと対照的な場所ですね。
これまで宿泊したホテルで、最高のホテルは?
インテリアが気に入っているというわけではないのですが、とても快適な滞在の思い出があるのが、マヨルカ島のフォーメントーにあるロイヤル・ハイドアウエイ・ホテルです。
広告の仕事のために行ったのですが、サービスと環境の良さに感動しました。
立派なプール、ビーチ、豪華なシーフードレストランなど、5つ星ホテルらしい設備もちゃんとありますが、私がもっとも気に入ったのは、トロピカルガーデンです。
私は庭園好きなので、砂浜のビーチを見下ろす、緑豊かなこのトロピカルガーデンがすっかり好きになりました。
これまでに滞在した中にも、素晴らしいホテルは、もちろんたくさんありましたが、すべてが高級ホテルとは限りません。カジュアルでフレンドリーなホテルでも、ゲストへの気配りが行き届いた、良いホテルがいくつもあります。
いわゆるラグジュアリーホテルと呼ばれるところでなくても、細かく気を配ってもらえるという意味では、間違いなく贅沢なホテルと言っていいでしょう。
行ったことがないところで、最も行ってみたいのはどこですか? それはなぜですか?
日本に行きたいですね。
私は日々「美」を追求しています。
インテリアづくりもそうですし、メンズファッションのアートディレクターとしての仕事もそうです。
テレビ、映画、写真にも関わっています。
日本のことは人から話を聞いたり、本や映像を通して知っていますが、日本はきっと刺激的な場所に違いないと思っています。
好きな旅のスタイルは?
ロンドンでは毎日、1968年製のベスパのスクーターに乗っています。
好きな方法を選べるとしたら、ビンテージのベスパでイタリアを回ってみたいですね。
極東をスクーターで旅行したこともあります。
スクーターのおかげで、とても快適な旅でした。
列車を待たなくていいし、暑い車の中に閉じ込められなくてすみますからね。
スクーターにはロマンチックな面もありますよね。
古いイタリア映画には登場人物がスクーターに乗る場面が出てきますが、とてもシックだと思います。
グローブ・トロッターには、いつも何を入れますか?
ノートとペンです。
ノートは用途が多くて、デッサンを描くスケッチブックにもなるし、思いついたアイデアを書くメモ帳にもなります。
またダイアリーとして、その日何をしたか、どこへいったかを記録したり、友人に推薦したいショップやレストランの情報を書き留めたりします。腕時計もたくさん入れます。
洋服に合わせて時計も替えるので、ほぼ毎日違う時計をします。休暇のときも、手近なもので間に合わせるような無神経なことはしたくないですからね。私の腕時計はすべてビンテージで、特に気に入っているのは、1966年製のオメガシーマスターです。祖父が亡くなったときに、思い出の品として自分で買ったものです。
旅に必ず持って行く贅沢品は?
シェービングの後に使うオーデコロンを必ず持って行きます。
腕時計と同じで、きちんと身だしなみを整えたという気分になれるからです。
ビーチやプールから上がって、1日を振り返りながらシャワーを浴び、夜のためにドレスアップするときは、ちゃんとおしゃれしたいですからね。そういうときに、フレグランスは最高の仕事をしてくれます。
よく使うものはふたつあって、ひとつはペンハリガンのエッサウィラ。
クラシックで力強い、男性的な香りです。
もうひとつは、アクア・ディ・パルマ・コロニア。
こちらはレモンを思わせる夏らしい香りです。
コロンのほかに、ヘルス・ロンドンのモイスチャーライザーも持って行きます。自宅で毎日使っているので、旅先でもその習慣を続けたいからです。
旅行のときは、どんなコーディネートですか?
友人のスコット・フレーザー・シンプソン氏がデザインしたハイウエストのリネンのパンツ(彼のスコット・フレーザー・コレクションは、私の店にも置いています)は、軽くて楽なのに、スマートに見えるので、愛用しています。
これにカジュアルな長袖シャツを、白いノースリーブのアンダーシャツの上に着て、気取らないペニーローファーを履いたら、次に忘れてならないのは、いい時計をすることです。
このスタイルなら、機内でも、スクーターに乗るときでも快適ですし、シャツやアンダーシャツを脱げば、ビーチにも対応できます。夜、軽く飲みに行くときや食事に行くときもOKです。
スマートなのに気楽さを演出できるスタイルだと思います。
私はこういうやり方ですが、旅行のとき、特に休暇の時はいつもとスタイルを変える人も多いですね。私は変えませんが。
写真をたくさん撮っていらっしゃいますが、旅行ではどんなカメラを使いますか? どんな場面を撮りたいですか?
iPhoneで撮影することも多いですよ。
いつも手元にあるし、最近は画質もずいぶんよくなりましたからね。
他には、キヤノンの古いフィルムカメラをいつもグローブ・トロッターに入れておき、海外の街を歩くときにはポケットに入れて出かけたりします。私が撮りたいのは、例えば市場のにぎわいなど、日常の何気ない風景で、後で見返したときにその場の雰囲気が思い出せるようなシーンです。去年行ったシチリアでは、とても絵になる市場を見つけました。店には大量のアボカドや、巨大なナスが並び、あたりを小さい犬が走っていました。その市場の風景も撮影しましたし、あとはパレルモでイワシをさばいている人や、美男美女の高齢のカップルが散歩しているところも写しました。
そういえば、ガールフレンドを待ちながら座ってコーヒーを飲んでいるときに、スラックスをはいてセーターを肩にかけたおしゃれなイタリア人男性を見つけたので、頼んで写真を撮らせてもらったこともありました。
きっと普段からスタイリッシュな人なんでしょうね。
あとは、仕事の参考になるインテリアの写真とか、ビンテージカーの写真もよく撮ります。私が美しいと思ったもの、心をひかれたものは、何でも撮影します。
また、完璧な日の出と日没の写真にもこだわっています。あと、犬と猫。平凡ですね。
ご自身で撮影した写真の中に、旅の魅力をとらえた、お気に入りの写真はありますか?
ベトナムで水牛を写した、いい写真があります。
水牛がよく撮れているというわけではなくて、撮影したときのエピソードが心に残っているのです。
私たちは5時間ほどかけて移動する途中、田舎の村を通りました。周囲を田んぼに囲まれた、素朴な美しい村でした。
見ると、少年たちがサッカーをしています。
私もサッカー好きなので、このまま通り過ぎたらきっと後悔すると思い、一緒にボールを蹴らせてもらいました。
彼らも私と同じように、楽しんでくれましたよ。
しばらくサッカーを楽しんで、そろそろ出発しようとしたそのときに、水牛がピッチに入り込んできたので、シャッターを押したんです。
その写真を見るたびに、少年たちとサッカーをしたことを思い出します。
オレンジ色のグローブ・トロッター 18インチ トロリーケースをお持ちだそうですね。そのケースのどこが気に入っていますか?
旅に出るときは、必ずこのグローブ・トロッターを持って行くほど、気に入っています。
オリエントいうモデルで、オリエント急行のラグジュアリーな旅をイメージしたものです。
オリエント急行には、いつか乗ってみたいですね。
このケースは、日本の漆(漆の木の樹液でつくられた塗料)を使って手作業で仕上げてあるので、光沢が非常に美しく、見た目も手触りもとてもなめらかです。
全体に細かいプリントが施されています。
漆のボディに、コントラストが際立つバーガンディのレザーのトリミングは、とても個性的な組み合わせだと思います。
機内持ち込みサイズなので、いつも手元に置いています。
せっかくの美しさが損なわれないように、大事にしています。
数日の短い旅行なら、この大きさで十分です。
特に気に入っているのはこの絶妙なカラーリングで、私の好きなグリーン系やクリーム系ともよく合います。
年月とともに味わいが増してくるのもいいところですね。
使い込まれた古いグローブ・トロッターを見かけると、うれしくなります。
このグローブ・トロッターはどこを旅してきたのだろう、持ち主は何を見たのだろうかと、つい、いろいろな想像を巡らせて、ロマンを感じますね。
グローブ・トロッターをもうひとつ手に入れるとしたら、どれがいいですか?
ストラップ、コーナー、ハンドルがナチュラルレザーのサファリがいいですね。
今のオリエントのケースより少しい大きい26インチのトロリーケースが欲しいです。
サファリはクラシックながら、クリーム色アイボリーカラーが差し色になってシャープな印象も加わり、飽きないと思います。
サファリを冬の旅行に、そしてオレンジ漆のケースを夏の旅行に持って行くといいのではないかと想像しています。
または、007 No Time To Die『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』コレクションの、オーシャングリーンにブラックトリムの4ホイール付きキャリーオントロリーケースもステキですね。
カーボン・ファイバー製の限定モデルにも心をひかれます。
007の限定モデルは、ルックスがいいし、コレクションをする楽しみもありますね。
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