ミラノを拠点とするクリエイティブ・コレクティブ「Anotherview(アナザービュー)」が手がける、24時間のビデオ映像を使ったシネマティックなアート作品。その世界観と初めて出会ったとき、Globe-Trotterは直感的な共鳴を覚えました。旅、時間、そしてその途中で紡がれる物語──それは、手仕事で詩情を描くラゲッジブランドと、静謐な風景を記録するレンズのまなざしが重なる瞬間でした。
この共有された価値観が形になったのが、「A Window to the World(世界への窓)」と題した最新のウィンドウ・インスタレーションです。グローブ・トロッターとAnotherviewのコラボレーションによって誕生した本作は、移動だけではない“旅の本質”──すなわち、内省や記憶──への静かな気づきを促します。
「私にとって、デザインとは形だけでなく、感情との共鳴です。」 そう語るのは、Anotherview創設者のひとり、マルコ・タバッソ氏。Galleria Rossana Orlandiで15年以上にわたり革新的なデザインに触れてきた彼は、“モノと体験の境界を曖昧にする”作品に魅了され続けてきました。
「窓からの風景が空間だけでなく、自分自身の感覚にも影響を与えることに、次第に惹かれていったのです。もしそれが、異なる場所、異なる時間、異なる人生からの眺めだったとしたら?」
その問いに、Anotherviewはひとつの答えを見出します。──それは「変容」です。彼らの作品は、あらかじめ語られた物語を押しつけるのではなく、ゆるやかに、そして幾層にも重なりながら現実が展開していく様を記録します。
「スピードとノイズにあふれたこの世界のなかで、私たちの仕事は“減速”を促すものです。」とマルコ氏。 「観察し、静寂に立ち返るための静かな呼びかけなのです。」

この考え方は、Globe-Trotterの哲学と深く響き合いました。ラゲッジという枠にとどまらず、旅そのものの意味を讃えるブランド──移動するという行為だけでなく、その途上で生まれる出会いや想像、記憶にこそ、旅の本質があると考えるのです。
「Globe-Trotterと出会ったとき、“何かが繋がった”と感じました。」とマルコ氏は振り返ります。 「彼らのスーツケースは黄金時代の旅を想起させると同時に、もっと深い“何か”を運ぶ器のようにも感じられたのです。」
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こうして生まれたのが、Anotherviewによる新プロジェクト「Memory of a Travel」。通常のウィンドウ型作品とは一線を画し、Globe-Trotterのカスタム・ケースに8K映像を収めた特別仕様。ケースを開くと、それ自体が“映像を内包した旅のオブジェ”として空間を彩ります。
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これはAnotherviewの新章とも言える挑戦であり、「時間」「映像」「アート」がインテリアと交差する創造的な実験でもあります。
──それらがグローブ・トロッターのシルエットに宿り、旅の感情を形あるものとして提示します。
ちなみに、Anotherviewが旅に必ず持っていくのは「延長コード」。「電源は、いつも思いもよらない場所にしかないのです。」

現在、「A Window to the World」は、グローブ・トロッター旗艦店(バーリントン・アーケード、パリ、銀座)にて展開中。そこに佇めば、誰もが足を止め、窓の向こうの世界に想いを馳せるはずです。スーツケースは、行き先を運ぶだけのものではありません。時に“旅そのもの”を、内に秘めているのかもしれません。
「このインスタレーションは、ただの“逃避”ではありません。」と、AnotherviewのTati氏は語ります。「人は皆、心のなかに“持ち歩いている風景”を持っている。それを静かに思い出すための装置なのです。そして、誰かとそれを分かち合うための。」
さて、Anotherviewが次に向かうのはどこか──
「リストは無限にありますね。……月、なんてどうでしょう?」とマルコ氏は微笑みました。