Globetrotting with…ジョー・ハンブロ

14 Oct 21

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Globetrotting with…ジョー・ハンブロ

『GQ』で24年間クリエイティブ・ファッション・ディレクターを務め、その後独立してファッションエディター、アートディレクター、スタイリストとして活躍するジョー・ハンブロさん。『GQ』時代に友情を深めたエルトン・ジョンは、現在も彼女のクライアントのひとりです。先日出版されたハンブロさんの著書『The Power of the Polaroid(ポラロイドの力)』では、エルトン・ジョンとその夫デヴィッド・ファーニッシュがまえがきを執筆しました。

この本は、ハンブロさんが世界各地でさまざまな撮影に参加したときのスケッチブックやポラロイド写真を通して、彼女の30年以上にわたるクリエイティブ活動を振り返るドキュメンタリーです。若いころからグローブ・トロッターの愛用者でもあるハンブロさんに、旅行のこと、ファッションのこと、写真のことなどを語っていただきました。

最初にグローブ・トロッターを知ったのはいつですか?

初めて社会人になり、『ヴォーグ』誌で「ローヴァー(訳注:「うろつく人」の意)」と呼ばれる、今で言うインターンのような仕事をしていたときです。動き回る仕事だったので、そう呼ばれていました。ファッション室に閉じこもって、撮影で靴が傷まないように靴底にテープを貼ったり、スーツケースに衣装を詰めたりすることも多かったのですが、そこにあったスーツケースが、グローブ・トロッターだったんです。中でも、青一色のケースがとても好きでした。

"グレース・コディントンが列車一台分のグローブ・トロッターと一緒にロケから帰ってくるのを見て、なんて素敵なんだろうと思いました"


『ヴォーグ』はなぜ、ロケ用のスーツケースにグローブ・トロッターを使ったのでしょうか?

軽くて、扱いやすくて、実用的だからです。『ヴォーグ』にあったスーツケースはすべて同じ大きさで、使い終わったときに積み上げて片付けるのも簡単でした。それから、これは大切なことですが、洋服を平らに入れられるだけのスペースの余裕があることもポイントです。撮影のときまで洋服をいい状態で保つ必要がありますから。当時、グレース・コディントンが列車一台分のグローブ・トロッターと一緒にロケから帰ってくるのを見て、なんて素敵なんだろうと思いました。「いつかお金が手に入ったら、私もグローブ・トロッターを買おう」と思いましたね。

そして、初めてご自身のグローブ・トロッターを手に入れたのは、いつでしたか?

『ヴォーグ』のローヴァーの仕事を終えて、次に、『カントリーライフ』誌でファッションアシスタントをしていたときです。週末には友人と一緒に田舎で過ごすことが多かったので、それにぴったりな小さめのケースが欲しくて。確か、最初の6カ月分の給料を貯めて買ったと思います。ラグジュアリーなものを買ったのはそれが初めてでしたし、そのケースにはもちろん『ヴォーグ』の思い出も詰まっています。


その後、他にもグローブ・トロッターを買いましたか?

ええ、もちろん。私はお得意さんですよ。しばらく前にソフトケースが流行ったときも、浮気はしませんでした。私がグローブ・トロッターと恋に落ちたのはずいぶん昔ですが、想いの強さは今も変わりません。最初は有名な青い色が気に入って、それを買いましたが、その後、他の色も好きになりました。あるとき通りを歩いていて、このオレンジがかった赤のケースを見つけました。1950年代の色で、パームビーチを強く思い起こさせる色です。このケースを持っていると、自分がグレース・ケリーかオードリー・ヘップバーンになったような気がして、最高の気分になったものです。ストラップはタンレザー、留め具はゴールドですが、コーラルレッドとタンレザーの横に温かみのあるゴールドの色があるのは、とてもいいですね。時代を超えて愛される組み合わせだと思います。これを見つけたときは「絶対に手に入れなきゃ!」と思いました。それで、奮発して大きいケースをふたつと、小さめのケースをひとつ買いました。小さいのは靴用です。20年ほど前の話ですが、今でも3つとも現役で活躍している私のお気に入りです。

グローブ・トロッターの気に入っている点を具体的に教えていただけますか?

ルックスのよさもそうですが、それ以外には軽さも大きなポイントです。荷物を入れる前から重いスーツケースもたくさん売っていますよね。内側にパーツが出っ張って場所をふさいでいるものもあります。私はパッキングにはこだわりがあって、洋服はすべて平らなまま、間に薄紙をはさみながら入れていきます。これは母から教わった方法ですが、とてもいい方法なんですよ。グローブ・トロッターはシンプルな長方形なので、そういう昔ながらのパッキングにも最適で、古い時代のトランクと同じように使えます。おそらく、グローブ・トロッターのルーツがそこにあるからでしょう。仕事のときは、青い大きなケースを使います。積み重ねやすいし、必要なときは腰を掛けることもできます。古くなると味わいが出てくるのも魅力ですね。質のいいレザージャケットのように、時とともに色が落ち着いて、なじんできます。個性が出てくるんです。

"どこへ行っても、空港でもホテルのロビーでも、いつもほめられます。誰もがみんな魅力を感じるんでしょうね。"


グローブ・トロッターを持っていると、注目されるのではないですか?

そうなんです。正直に言うと、注目されるのはうれしいですね。グローブ・トロッターは本当に人気があるんですよ。どこへ行っても、空港でもホテルのロビーでも、いつもほめられます。誰もがみんな魅力を感じるんでしょうね。飛行機を降りてターンテーブルの前で荷物が出てくるのを待つとき、黒一色の背景の中にコーラルレッドがきらめいているのが見えると、とてもうれしくなります。いつでもどこでも私のグローブ・トロッターは注目の的ですし、近づいてきて「素敵なスーツケースですね」と声をかけてくれる人もいます。

ファッションエディターというお仕事がら、世界中を旅行されると思います。グローブ・トロッターとともに行った最も遠いところはどこですか?

世界中のあらゆるところに持っていきましたよ。よく行くのはアメリカです。有名なスターの撮影は、先方の都合に合わせてアメリカですることが多いので。エアロスミスのスティーヴン・タイラーの撮影をしたときは、ロベルト・カヴァリの服をたくさん詰めてボストンに持っていきました。ベニチオ・デル・トロにしわの付いたリネンのスーツを着てもらったときも、ロサンゼルスまでグローブ・トロッターで運びました(自然体が魅力のベニチオのルックスには少しくたびれた感じのスーツが合うので、あえてしわをつけたままにしました)。ニューヨークでピーター・リンドバーグと一緒にキース・リチャーズの撮影をしたときは、グッチ、アルマーニ、ドルチェ&ガッバーナのコートを入れました。もっと遠い所へも持って行きましたよ。ハワイ、インドネシアのジャカルタ、アフリカ、インドも。インドでは、ハンスペーター・シュナイダーとボリウッド(インドの映画界)の撮影もしました。それからネパールにバリ、キューバ、アルゼンチン……本当にたくさんのところに行きました。

お仕事で行ったところの中で、いちばんの冒険だったのは、どこですか?

それならネパールですね。ネパールのタイガートップスというところで、象の世話をしている人の撮影をしたときです。夜明けに、象に乗りました。一緒に行ったフォトグラファーのダナ・リクセンバーグは、大きなプレートカメラを使っていました。おもしろいことがあったんです。そこでは通常、木の上に泊まるのですが、私がグローブ・トロッターをたくさん持って行ったおかげで、ロイヤルロッジに泊まることができました。どうやら私のスーツケースを全部、木の上に上げるのは無理だと思われたようです。と言っても、ワラで作られたロッジですから、それでもかなり野生的でしたけれど。

"私は、ありきたりなファッション写真は作りません。毎回、ストーリーを練り上げるように撮影します。"


これまで参加された撮影の中で、いちばん思い出深いのは?

難しい質問ですね。なにしろ30年も撮影に関わってきましたから。この仕事の恵まれているところは、世界中を旅行できること、世界のさまざまなところに呼んでもらえることです。そのすべてが思い出深い体験です。私は、ありきたりなファッション写真は作りません。毎回、ストーリーを練り上げるように撮影します。アラスカのスノーボーダーと一緒だったり、カリフォルニアの砂漠でモトクロスのライダーに協力してもらったり、牧場の小屋に泊まって、カウガールになったこともあります。グローブ・トロッターを手にすると、これから冒険が始まるのだと思うんです。

長距離を移動するときは、どんな装いで行きますか?

空港ではいつもエレガントに装っていたいので、飛行機に乗ってから、ゆったりできる服に着替えるのが習慣です。ジェームス・パースのドローストリングジョギングパンツとルーズなトップスに着替え、フライトソックスをはきます。小さな袋に入った折り畳みのスリッパも用意します。ショールなどの羽織るものと、ローズやラベンダーなど、いい香りのスプレーも。いつもビジネスクラスですが、フェイスクリームとハンドクリームをつけるとリラックスして自分の世界に浸れます。機内用のバッグにはダークチョコレートと、お水をたくさん入れています。とっておきの秘訣は、「ポラーゼ」というイタリアのサプリの小袋を持って行くことです。ミネラルが入ったパウダー状のサプリで、水に溶かすと柑橘風味のドリンクになります。これを飲むと、とても気分がよくなるんです。カリフォルニアまでのフライトなら、フライト中に2袋、着いてから1袋くらい飲みます。イタリアの人はみんな、オフィスの引き出しにポラーゼを入れているそうです。私はいつも、トラック1台分くらい買いますよ。

上手なパッキングのコツを教えていただけますか?

プライベートな旅行の場合、以前は1着のスカートを7通りに使う方法を考えたりして、ムダのないパッキングをしていました。でも、友人のエルトン(ジョン)にアドバイスされてから、それはやめました。彼は、こう言ったんです。「バカなことするなよ。スカートが7着必要なんだろ」。今は、準備万端に荷物を揃えます。現地でどんなところに招待されるかも分かりませんから、大切なことですよね。いいスーツケースがあれば、実は簡単なことなんです。外国にいるときでも、着るものの選択肢がいろいろあるのは楽しいことですし。だから今は効率にはこだわらず、自分の好きなものや、あるとハッピーになれるものを全部入れて、何があってもいいようにしています。だけど、全部をぎゅうぎゅう詰めにはしません。スーツケースの数を増やすんです。

これまで滞在した中で、最高のホテルはどこですか?

私はザ・ビバリー・ヒルズ・ホテルやベル・エアのような伝統のある古いホテルが好きです。古くて立派な造りのホテルですね。でも、個性的な珍しいホテルの中にもいいホテルがあります。例えば、カリフォルニアのビッグ・サーに、ポスト・ランチ・インという、太平洋を見下ろす素晴らしいホテルがあります。建築家のミッキー・ミューニングが設計したホテルで、木材とガラスしか使っていません。でも、何といってもいちばん気に入っているのは、新婚旅行で行ったイタリアのポジターノにあるイル・サン・ピエトロですね。まさに1950年代の絵はがきの中か、ヴィスコンティの映画の中に入り込んだような気分になれます。私にぴったりです。家族経営で、昔から全く変わっていないらしく、夫の両親も休暇によく訪れていたと言いますから、おもしろいですよね。建物は岩の中に建っていて、ビーチまでエレベーターで降りていくんです。古いチャペルを中心にこういうホテルを作るのが、きっとオーナーの夢だったのでしょう。本当に、魔法の世界みたいですよ。

旅行に必ず持って行くものは?

グローブ・トロッターは当然のこととして、あとはカメラです。私は今でも、写真を撮るときはスマートフォンよりカメラの方が好みです。それからいい本を一冊と、スケッチブック、鉛筆。キャンドルを灯してリラックスするのが好きなので、キャンドル。あとはダークチョコレート、ネアンズのオーツケーキ、アーモンド。忘れもしませんが、アルゼンチンに撮影に行ったとき、税関を通るのに3、4時間もかかったんです。そのときに役に立ったものがふたつありました。ひとつは椅子の代わりになってくれたグローブ・トロッター、もうひとつはエネルギーを補給してくれたオーツケーキです。食べるものがあると、元気が出ますよね。

旅で出会った人で、いちばんおもしろかったのはどんな人ですか。

私は好奇心が強いので、いろいろな人に会うことをとても楽しんでいます。有名人もいますが、大半は無名の人たちです。モーリシャスへ撮影に行ったとき、私は洋服を入れたグローブ・トロッターを山ほど持って空港に降り立ちました。出迎えてくれた現地ガイドの人は、私を自宅に招待してくれて、ご家族にも紹介してくれました。実は、これはよくあることなんです。多くの人は旅行者として外国に行きますが、私は仕事がら、とても幸運な立場にいて、現地の人の視点でいろいろな国を見ることがでるんです。以前ハワイに行ったとき、ガイドさんが一般的な観光地に案内しようとしたので、「そうじゃなくて、あなたならではのハワイを見せてほしい」と頼みました。その結果、現地のサーファーのコミュニティを知ることができたのです。モデルではない人を撮影することもよくあります。たとえばアルゼンチンのポロ競技の選手や芸術家、作家たち、ネパールの象使い、ボリウッドの背景画家やカメラマンといった裏方さんたちなどです。私のインドの写真を見て、パキスタン政府の方が「ぜひ我が国のことも紹介してほしい」と招待してくださったこともあります。

そうしたたくさんの写真が『The Power of the Polaroid: Instantly Forever(ポラロイドの力:一瞬で永遠に)』 に収められているわけですね。

そうです。ポラロイドが撮影のツールとしてどんなふうに使われていたか、また、フォトグラファーたちがそれぞれ自分なりの方法でポラロイドを使い、写真の構成を作り上げてきた様子などを紹介しています。もちろんこれはデジタルが登場する前の話で、当時は写真の完成形を現場で確認するのにポラロイドを使っていたわけです。私は撮影現場からポラロイドを集め、こうして本にまとめました。私とフォトグラファーの仕事中の会話や、彼らの撮影手法などが書かれています。ですから、この本はリビングに飾るのではなく、実際にマニュアルとして役立ててほしい本です。

『The Power of the Polaroid: Instantly Forever』ジョー・ハンブロ著、エルトン・ジョン、デヴィッド・ファーニッシュ寄稿。定価30ポンド。Johambrocreative.com

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