英国ではステイケーションの人気が高まっています。
将来、長期バカンスを計画中の人や英国旅行を計画している人たちへ、家族全員で楽しめるイギリス国内の人気のリゾート・デスティネーションをご紹介します。
The Lake District
湖水地方
険しい山岳地帯、湖、森などが特徴のイギリス最大の国立公園です。
写真映えするかわいらしい村があるかと思えば、壮大な自然美がドラマチックに広がっているなど、さまざまな魅力が詰まったエリアです。
湖水地方の美しさはイギリスを代表する多くの文学者の心も動かしました。
「郭公の詩人」で知られるウィリアム・ワーズワースはロマンティックな詩を作り、ピーターラビットの作者 ビアトリクス・ポターはたくさんの人々に愛される絵本を作りました。
2017年にはユネスコの世界文化遺産にも登録されています。
ここにはイングランドの最高峰スコーフェル・パイクや、国内最大級の大きさを誇るワストウォーター湖やウインダミア湖があります。
そんな大自然の中で登山やセーリングを楽しんだり、ピーター・ラビットの世界さながらの歴史ある町や村を訪ね、グラスミア・ジンジャーブレッドやケンデル・ミントケーキといった地元の味を堪能したり、楽しみは尽きません。
宿泊施設の選択肢も豊富です。
キャンプやB&Bといった手軽なものから、貸別荘やラグジュアリーホテルまで、幅広くそろっています。
優雅なホテルでゆったり滞在したい方には、湖水地方の中心、グラスミア村(アンブルサイド)にあるフォレストサイド・ホテルがお勧めです。
ビクトリア朝様式の邸宅を改修した美しい建物を一歩外に出ると、目に入るのはのどかな田園風景。
敷地内には野生の植物が茂る「フィルサイド」と呼ばれる散策エリアがあり、ノロジカやアカリスに出会えることもあります。
フォレストサイド・ホテルには、数々の賞を受け、地元の食通に高く評価されるレストランがあります。
料理長のポール・レナードさんが作り出すのは「洗練されたカンブリアン・キュイジーヌ」。
地元で獲れた旬の素材を使い、周囲の自然にインスパイアされたサステナブルな料理です。
素材の大半はホテルから10マイル(約16キロメートル)以内で調達したもので、ホテル内のキッチンガーデンで栽培したり加工したものも多く使われています。
さらに、料理をサーブする食器まで地元産の陶器を使うこだわりよう。6品のランチコース、8品のディナーコースは、まさに湖水地方をめぐる味の旅です。
Dorset
ドーセット
ドラマチックな海岸線とカラフルな風景が、何世紀にもわたって多くの芸術家を引き付けてきたドーセット。
イングランド唯一の世界自然遺産であるジュラシック・コーストに隣接するこの辺りは、伝統あるレストランが食通に愛され、壮大な風景と大自然の神秘がアウトドア好きの心をつかんでいます。
古代の洞窟や目もくらむような断崖、岩のアーチとして有名なダードルドアなど、見ごたえのある名所がたくさんあるほか、160キロメートルにも及ぶ海岸線に沿って、ハイブ・ビーチ、ライム・レジス、マンオウワー・ビーチ、チェシル・ビーチなど、砂利浜から金色の砂浜まで、さまざまなタイプのビーチが点在して人気を呼んでいます。
チェシル・ビーチは、イアン・マキューアンのベストセラー小説を映画化した作品の舞台にもなりました。
「ドーセットの真珠」と呼ばれるライム・レジスは、古風な味わいのある港町ですが、たくさんの観光客のみならず、化石ハンターにも人気があります。
1799年にここで生まれた有名な古生物学者、メアリー・アニングにあやかって、貴重な古代の化石を見つけようとやってくるのです。
そのライム・レジスで、カリスマシェフのマーク・ヒックスさんが2020年にザ・オイスター&フィッシュハウスというレストランをオープンしました。
海を見下ろす眺めのいい店で、サステナブルな方法で獲れた英国産の魚やシーフードを使ったメニューを提供しています。
ドーセットにはほかにも、やはり受賞歴のあるクラブハウス・カフェ(チェシル・ビーチからすぐ)や家族経営のハイブ・ビーチ・カフェ(バートン・ブラッドストック)など、新鮮なシーフードが楽しめる名店がいくつもあります。
ここでの滞在にはシーサイド・ボーディング・ハウスはいかがでしょう。
ロンドンのグルーチョ・クラブ(出版業界やエンターテインメント業界などの人々が参加するメンバーズクラブ)の運営にも携わっているメンバーによるブティックホテルです。
併設のレストランでは、気取らない中に品の良さを感じさせるしつらえの中で、洗練された食事、上質なワインやカクテルを提供しています。イギリスの伝統的なアフタヌーンティーを楽しむこともできます。
Devon
デヴォン
長い海岸線、起伏にとんだ荒野、パッチワークのような田園風景が広がるデヴォン。
自然を愛する人には楽園のようなところです。
海岸線は700キロメートルにおよび、断崖や金色の砂浜など自然の迫力を感じられる北部から、「イギリスのリビエラ」と呼ばれ、絵はがきのように美しい港町のある南部まで、さまざまな表情を見せてくれます。
アクティブに楽しみたいという人には、クロイドベイやトーキーなどの海岸で美しい風景を楽しみながらのサーフィン、のどかな田園地帯でのハイキングやキャンプがお勧めです。
また、エクセターやプリマスといったにぎやかな街もあり、散策も楽しめます。
フレッシュなクロテッドクリーム、アイスクリーム、チーズなどの産地として世界に知られたデヴォンシャーには、ミシュランの星付きレストランが4軒あります。
この1年、5つ星レストランのホスピタリティや食事を我慢していた人(みんなそうですよね)が、久しぶりに外での食事を楽しむのに最適なエリアです。
そのひとつ、ライムストーン・マナーは、風光明媚なエグゼ・エスチュアリーにあるグレード2指定のカントリーハウス・ホテルです。
ここには有名なシェフ、マイケル・ケインさんが率いるレストランがあり、多くの食通たちに注目されています。
2017年にオープンしてからわずか半年でミシュランのひとつ星を獲得。専用のブドウ畑を持ち、設備の整ったワインセラーも備えています。
同じくザ・ピッグ・アット・コームは、ブティックホテルグループのボバインが運営する人気のホテルで、「地面に指を突き刺したら、指が成長する」とまで言われる肥沃な地の利を生かし、自然回帰をコンセプトとして建てられたホテルです。
静かな場所でラグジュアリーな滞在を楽しむなら、サルクーム近くのガラ・ロック・ホテルがお勧めです。崖の上に建つこのホテルでは、広々とした田園風景と人けのないビーチを見下ろしながら、世界トップレベルのおもてなしを堪能できます。
The Cotswolds
コッツウォルズ
コッツウォルズは、イングランドとウェールズの中で最大の面積を誇る特別自然美観地域で、愛らしく美しい景観が有名です。
コッツウォルズストーンを使った古い家並みはまるで時代が止まっているかのように、豊かに茂る緑の中に美しく映えています。
シーズンには、あちこちで咲き誇るバラの花も見られます。
コッツウォルズには散策に適したイギリスらしいのどかな田舎町がたくさんあり、どこに出かけるか迷うほど。
バースやチェルトナムに行けば、石畳の道にそって個人商店やカントリーパブ、新鮮な野菜や果物を積み上げたファーマーズマーケットが並び、大勢の人でにぎわっています。
またテットベリーは豊富なアンティークが手に入ることで有名です。
また、コッツウォルズは、なだらかに続く丘や生垣に沿った田舎道などが続き、空気がさわやかで、自然の中のウォーキングやサイクリングにも最適なところです。
ロウワー・ミル・エステートは、別荘を備えたプライベートな自然保護エリアです。
敷地の中には9つの湖があり、2本の川が流れていて、カヤックやウインドサーフィンを楽しむことができます。
またはサーブの練習をしてから、スパでリラックスするのはいかがでしょう。
受賞歴のあるハイレベルなスパも併設しています。
屋内で過ごしたい日には、一般公開されているお城や邸宅をめぐったり、歴史的な建造物や教会を訪ねてみるのもお勧めです。
伝統的でラグジュアリーなカントリーハウスを堪能したいなら、バースとキャッスルコームの中ほどにあるザ・ロスト・オランジュリーを予約しましょう。
ここはベッドルーム2室を備えたレンタルコテージです。ここのエステート全体の設計を担当したチームは、コッツウォルズ近くのハイグローブ・ハウスをはじめ、数々の宮殿の庭園の設計も手掛けています。
Snowdonia
スノードニア
北ウェールズに位置し、美しい景観で知られる山岳地帯です。
ウェールズの最高峰スノードン山が有名です。
最も人気があるアトラクションは言うまでもなくハイキング。
標高1085メートルのスノードン山頂を目指します。
初心者にはランベリスパスと呼ばれるルートがお勧めです。
全長約15キロメートルと全ルートの中で最長ですが、その分、傾斜が緩やかです。
登山開始から下山を終えるまで、6~8時間ほどあればいいでしょう。山登りに自信がない人も、山頂からの眺めをあきらめる必要はありません。
スノードン登山鉄道に乗れば、雲を突っ切って山頂まで運んでくれます。
もうひとつの見どころとしてお勧めなのが、金色の海岸に風が吹き渡るリーン半島です。
アベルソホの町は、穏やかな微気候で知られ、夏にはチェシャ―州からたくさんの人がバカンスにやってきます。
ユネスコ世界遺産のコンウィ城や、ロイヤル・セント・デイヴィス、アバードヴェイ、ネフィンといったイギリス有数のゴルフコースもここにあります。
1日たっぷり活動した後は、5つ星のラグジュアリーなカントリーハウス・ホテル、パレ・ホールでゆっくりと休みましょう。
国立公園の西端の広大な敷地に建つビクトリア朝様式のマナーハウスで、細やかな装飾が施された室内、美しく手入れされた敷地、壮大な山々の眺めなど、さまざまな魅力があいまって、贅沢さと心地よさが見事に調和しています。
料理長のガレス・スティーヴンソンさんが率いるヘンリー・ロバートソン・ダイニング・ルームは、多くの店が目指しているミシュランのグリーンスターを獲得。味の追求とサステナビリティの両立でも高く評価されているレストランです。
Norfolk
ノーフォーク
イーストアングリア・カウンティはどこまでも広がる空、フリント石材で作られた端正な家並み、自然のままのビーチ、豊かな野生生物などの魅力にあふれ、昔から誰もが憧れるリゾート地でした。
最近ではグルメシーンの充実やファッショナブルなホテルの数々、シックな村のたたずまいにロンドンっ子が注目し、カントリーサイドののどかさと現代的な過ごしやすさを兼ね備えたデスティネーションとして、さらに人気が高まっています。
ノーフォーク出身の有名人、ネルソン子爵ともゆかりの深いバーナム・マーケットには、魅力的な店やレストランが軒を連ねています。
ザ・ホストに滞在すればエレガントな客室とおいしい料理を堪能できますし、バーナム・マーケット・ストアーズで地元の味を試してみるのもいいものです。
バーナム・マーケットのすぐそば、天然の真っ白なビーチが何マイルも続くホルカム海岸は、イギリスで最も美しいビーチと言っていいかもしれません。
その隣には起伏のある砂丘が広がり、多種多様な野生の生き物が生息しています。
ホルカム海岸の近くで公開されている貴族の館、ホルカムホールは一見の価値があります。
また、ノーフォークを代表する宿のひとつ、ザ・ヴィクトリア・インもすぐ近くです。
一方、ノーフォーク東部の見どころは、穏やかな水路に沿って曲がりくねった散策路がどこまでも続くブローズ国立公園と、海辺の町グレートヤーマス。
宿泊におすすめなのがフリットン・レイクで、ここでは大がかりな再野生化プロジェクトが進むと同時に、サステナビリティに配慮したプライベート・クラブが運営されており、ブティックホテルのような施設に宿泊しながら、ハイクオリティな地元の料理や飲み物を味わい、さまざまな魅力あるアクティビティを楽しむことができます。
Margate and Kent Coast マーゲートとケント海岸
最近の再開発で魅力を増したマーゲートと、まるで絵はがきのようなウィスタブルを擁するケント海岸一帯は、リゾート地としての人気を確立しつつあります。
マーゲイトでは2011年に美術館のターナーコンテンポラリーが開館し、その4年後には、レトロなテーマパークのドリームランドが再オープン。
地元の人々が待ち望んでいた人気と経済の復活が実現しました。
それ以来、ロンドンから観光客が押し寄せ、日帰り旅行や宿泊しての観光を楽しむばかりでなく、芸術が根付いた地域の文化と物価の安さに魅力を感じ、ここに移住しようという人も現れるようになりました。
マーゲートは、レトロな魅力にあふれています。
にぎやかなアーケード、フィッシュアンドチップスを売る店、砂浜には昔ながらの子どもの遊具。
その一方、最新の流行を取り入れた新しいバーやレストラン、地元のエールビールやシードルが自慢のマイクロパブなどがたくさんあり、イギリス中からやってくる観光客を飽きさせません。
また、ラムズゲイトやハーンベイといった海辺の町に足を延ばすにも、とても便利な立地です。
ウィスタブルとブロードステアズでは、また違ったケント海岸の魅力が楽しめます。お勧めのお店は、まずマーゲイトのオールドタウンの中心部にあるラムジー&ウィリアムズ・アイスクリーム・バー。
伝統的なアイスクリームが人気です。
ハーバーアームズ・マイクロパブでは、ターナーも愛した夕暮れ時の風景を眺められます。
また、ロックバンドのザ・リバティーンズのメンバーが設立した(本当ですよ!)個性的なアルビオン・ルームズ・ホテルの滞在もお勧めです。
Isle of Wight
ワイト島
フェリーに乗ってワイト島へ向かえば、まるで海外旅行に出かけるような気分になります。
違うのは、外国語の会話集と通貨の両替が必要ないことくらいです。
ワイト島には楽しみがたくさんありますが、37キロメートル×20キロメートルというこじんまりした島なので、どこに滞在しても、アクセスは便利です。
南海岸のヴェントナーにあるブティックホテル、ハンブローは広大なイギリス海峡の眺めとモダンテイストの上質なインテリア、ハイレベルなレストランが魅力の高級ホテルです。
ヴェントナー植物園とはわずか1.5ほどしか離れていないので、優雅な気分で休憩するにはぴったりのスポットです。
もっとノスタルジックな体験がしてみたいという人は、ライドにあるヴィンテージ・ヴァケーションでの滞在はいかがでしょうか。
ここの客室はなんとエアストリーム社製のトレーラーハウス。
最も古いものは1942年製の2ベッドタイプのもので、かつての輝かしい姿に修復され、レトロなフォーマイカのテーブル、温かみのある花模様のキルト、キッチュな装飾品、古いボードゲームなどで懐かしい雰囲気が演出されています。
ワイト島の豊かな産物を味わえるグルメをお探しなら、島の北西部のコルウェルベイにあるザ・ハットがお勧めです。
フィッシュタコスからシーフードの盛り合わせまで、さまざまなメニューがそろっています。
または、ニューチャーチのニンニク畑まで足を延ばせば、食事を楽しむだけでなく、ジューシーな甘みが後を引く黒ニンニクの球根をお土産にすることもできます。
また、周囲の草原を駆け回るアカリスの珍しい姿が見られるかもしれません。
島の暮らしを体感するには、東部のサンダウンへ。
ワイト島で初めての、そして唯一のクラフトビール・バーであるブージャム&スナークがあります。
島の伝統である醸造文化を守ろうと、サステナブルなアプローチと手頃な価格であちこちの小規模なブルワリーから仕入れたクラフトビールを提供するほか、自らもクラフトビールを醸造しています。
また、芸術作品の展示スペースもあり、地元で活躍する芸術家によるインスタレーション、絵画、彫刻などが展示されています。
ワイト島音楽祭は、今年は再開される予定です。9月16日に開催されますが、出演者は未定です。
Nidderdale and North Yorkshire
ニダーデールとノースヨークシャー
絵のように美しい村々や蛇行する谷から険しい荒野まで、ノースヨークシャーでは、イギリスのカントリーサイドの自然や文化を代表する典型的な風景がいくつも見られます。
とりわけ特別自然美観地域(AONB)に指定されたニダーデールを訪れれば、手つかずのまま残された自然の風景に、きっと心を打たれることでしょう。
ニダーデールは、ヨークシャーにあるたくさんの小さな谷(デール)のひとつですが、その美しさは他を圧倒しています。
周辺には町はひとつだけ、パトリーブリッジしかないので、壮大な自然を見るための拠点は、おのずとことになります。
パトリーブリッジには、ギネス世界記録で認定された世界で一番古い菓子店、その名もオールデスト・スイート・ショップ・イン・ザ・ワールドがあります。
1827年からずっと商売を続けているそうです。
町の中心部にあるハイ・ストリートには他に、おしゃれな紅茶店、個人経営のベーカリー、肉屋、地元の作家や芸術家の作品を展示する工芸品店やギャラリーなどがあります。
ハイ・ストリートから車で2分、あるいは徒歩で10分のところにあるのが、洗練されたスタイリッシュなホテル、グラスフィールド・ホール・ホテルです。
広い敷地の中に建つ優雅なカントリーハウスはグレード2に指定されています。
ゲストルームは8室で、いずれもバス付き。
すべての部屋がそれぞれ異なるコンセプトでデザインされています。ホテルのそばにはニダーデールという地名の由来になったニド川が流れ、川に沿って眺めのいい遊歩道が伸びています。
石垣が続く緑豊かな丘や、はるかに見下ろす谷の景色を眺めながら川に沿って30分ほど歩き、お腹が空いたころに見つかるのが、グラスフィールド・ホールから約2.5キロメートルのところにあるホテル兼レストランのザ・スポーツマンズ・アーム。
ラウンジもレストランもとても居心地がよく、30年以上前から同じ一家が経営しています。
のどかなワス村のはずれにあり、ティモシーテイラーズやマシャムのブラックシープ・ブリューワリーから取り寄せた地元のエールビールや、材料の多くを店から1マイル(1.6キロメートル)以内で調達したバラエティ豊かなメニューが自慢です。俳優のダニエル・クレイグさんがよく訪れるそうですから、運がよければ会えるかもしれませんね。
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