過ぎ去りし日々：アルビオンコレクションに込められたもの

ロックダウンは思いがけないいくつもの影響をもたらしましたが、そのひとつが、肩ひじはらずに取り組めるのんびりした趣味の復活です。マクラメ編みのプラントホルダーを作ったり、庭の手入れをしたり、バナナブレッドを焼いたり。シンプルに、自然に、スローペースで生活を楽しむ新しいトレンド―「コテージコア」とも呼ばれます―が生まれました。

「グレートブリティッシュホリデー」という休暇の過ごし方が復活したのも、昨年の旅行制限がきっかけだったことは間違いありません。まだ航空運賃が高く、海外旅行が庶民には手の届かないものだったころ、普通のイギリス人にとって贅沢と言えば、夏の休暇を海辺で過ごすことでした。とは言え、今よりつつましかった彼らの休暇が退屈だったわけではありません。街中を離れ、海辺や田舎の新鮮な景色の中で過ごす数週間は、人々をとてもリフレッシュさせてくれました。サフォーク、ノーフォーク、コーンウォール、ブライトン、湖水地方など新しい休暇スポットがたくさん生まれ、それらは今でも人気の観光地になっています。

1950年代から60年代のグレートブリティッシュホリデーを思い浮かべると、どこかレトロな魅力を感じます。風刺のきいた写真で知られるフォトグラファーのマーティン・パーなら、3世代の大家族（と愛犬）が1台の自動車にぎゅうぎゅう詰めになっているシーンや、海水浴客でごった返す石ころだらけのビーチ、フィッシュ＆チップス、騒々しいアーケードゲームの機械、くたびれたテントの中で悪天候に耐えるシーンなどを撮影するかもしれません。

そんなノスタルジーと、本格的なイギリスらしさをデザインの核にしたのが、グローブ・トロッターから発売されたアルビオンコレクションです。

イギリスの昔ながらの行楽旅行のイメージを、現代の旅にふさわしいデザインに再構築しました。同時に、現在もデザイン・製造のすべてをイギリス国内で行う誇り高き老舗ブランドとして、豊かな伝統も生かしています。

デザイナーのシャーロット・セドンがインスピレーションを得たのは、グローブ・トロッターのアーカイブでした。そこには数十年にわたるグローブ・トロッターの歴史が残されていて、一家に代々受け継がれて愛用されたケースや、旅行先で他家の所有物と区別ができるように、外側に一族を象徴する固有のストライプを施したものもたくさんありました。

アルビオンコレクションは、美しい2種類のカラーを用意しています。海辺をイメージした「ドーセット」は、アイボリーカラーのヴァルカン・ファイバーボードのボディに、パステルブルーのレザーコーナーがアクセントになっています。きらめく海と空、キャンディカラーのアイスクリーム、ビーチハットに着想したレトロなカラーリングです。ボディを開くと、陽気なパッチワーク柄のライニングにもその配色が生かされています。ボディの赤いストライプは灯台の標識のようでもあり、またグローブ・トロッターのアーカイブに記録されたスーツケースも彷彿とさせ、センテナリーのシルエットをさらにさかのぼった伝統的なスタイルを踏襲して作られたものであることを示しています。もうひとつは、落ち着いた色のボディにブルーとクリームのストライプを配した「コッツウォルズ」です。イギリスのカントリーサイドに昔のまま残る村や、石造りのコテージをイメージしています。外観の落ち着きとは反対に、内部のライニングはカラフルな配色。そのインスピレーション源は、デイヴィッド・ホックニーの風景画や、空から見下ろすとまるでパッチワークキルトのように広がるかつての美しいイギリスのカントリーサイドの風景です。

アルビオンコレクションは家族全員で使えるように、幅広いラインナップがそろっています。グローブ・トロッターのシグネチャーハンドバッグであるロンドンスクエア、手軽なサイズのキャリーオンケースから、家族旅行に適した30インチのチェックインケースまで、種類はさまざま。シーズンコレクションでは初めて、グローブ・トロッターの革新的な4ホイールを搭載しているほか、ラゲッジタグやレザーステッカーも新たに発売します。

「イギリスの人たちは、何十年も前から国内の島々を、スーツケースを携えて旅してきました。そのスーツケースは代々受け継がれ、数え切れないほどの特別な思い出を子や孫に伝え、やがてかけがえのない家の財産になっていきます」。シャーロット・セドンはアルビオンコレクションへの想いをこのように語っています。「そんな思い出を大切にデザインしたのが2021年の春・夏コレクションです。1950年代を思わせる色遣いは、かつてイギリス国内で過ごした夏の休暇の楽しさを表現していますが、世界中に出かける現代の家族旅行に合わせてアップデートしています」