レンズの向こう側で――グレッグ・ウィリアムズ

06 Oct 21

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レンズの向こう側で――グレッグ・ウィリアムズ

写真家のグレッグ・ウィリアムズさんに、映画『007』シリーズやグローブ・トロッターにまつわる体験や、旅を愛する想い、写真愛好家へのアドバイスなどを伺いました。

グレッグ・ウィリアムズさんは、1990年代のミャンマー、チェチェン、シエラレオネで戦地を取材し、フォトジャーナリストとしての報道スタイルを確立しました。その後、『サンデー・タイムズ・マガジン』誌から依頼を受けたことをきっかけに映画の世界に参入し、『007』シリーズのポスターキャンペーン4回を含め、これまでに200本を超える映画のポスターや舞台裏などを撮影しています。現在、英国アカデミー賞、米国アカデミー賞、ゴールデングローブ賞で特別に取材を認められているほか、『ヴァニティフェア』、英国版『ヴォーグ』といった雑誌にもたびたび作品を掲載しています。20年以上にわたって『007』シリーズの写真撮影を続け、最新作『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』のキャンペーンにも参加しています。

いつごろから写真を好きになり始めたのですか?

私が6歳のときに、遠くカナダに住む母のいとこが、大きなカメラをいくつも持ってやってきました。彼の一眼レフカメラ、長い望遠レンズ、大型のフラッシュガン、ポラロイドカメラといった機材はとても魅力的に見えました。ポラロイドカメラはおそらく私の人生で最高にカッコいい一台だったと思います。私はすっかり心を奪われました。彼が帰ってから3週間ほど経ったとき、郵便受けに小さな小包が届いて、すっかり古びたコダックのインスタマチック110が入っていました。部品がいくつか無くなっていたように記憶していますが、遮光はしっかりしていて撮影できる状態でした。彼は僕の両親に「きっとグレッグは気に入ると思う。ずいぶん興味があるようだったから」と言ったそうです。それをきっかけに、写真に興味を持つようになりました。6歳の時から目指していた写真家になれたことは、幸運なことだと思います。

"人生の終わりに見返しても、あのときの写真は特別に大切なものになるでしょう。"


『007』シリーズの写真撮影を始めたのはいつですか? 初めての『007』で心に残ったことを教えてください。

初めて『007』の仕事をしたのはピアース・ブロスナンが主演した『007/ダイ・アナザー・デイ』でした。一番の思い出と言えば、スペインのカディスで撮影した日のことです、キューバのハバナが舞台のシーンで、ハル・ベリーがオレンジ色のビキニを着て海から上がってくる、あの有名なシーンです。私たちはビーチから撮影しましたが、そばにピアース・ブロスナンもいて、非常に和やかな雰囲気の中で自由に写真を撮ることができました。自分がいかに特別な環境で撮影させてもらっているかを実感しましたね。そのとき撮影した何枚かの写真は今でもよく見返します。人生の終わりに見返しても、あのときの写真は特別に大切なものになるでしょう。

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『007』の写真撮影で各地に行かれましたが、最もエキサイティングだった土地はどこでしたか?

チリのアタカマ砂漠ですね。『007/慰めの報酬』を撮影した場所です。本当に遠い所へ来たと感じました。地球上で最も乾燥した場所だそうです。あれは特別な体験でした。

最新作『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』の写真撮影で最も心に残っているのは?

ティーザーポスターの初回の撮影でしょう。まずテストポートレートを撮ろうということで、ダニエル・クレイグと私が直接打ち合わせをして、ダニエルが毎日トレーニングをしているジムに仮設のスタジオをつくりました。そういう小規模な撮影を想定したわけです。わずか3、4人ほどのチームで、親近感のあるいい撮影ができました。

『ノー・タイム・トゥ・ダイ』でも各地に行かれたと思いますが、フォトグラファーとしての視点から、最もエキサイティングなビジュアルだったのは、どこでしたか?

イタリアのマテーラです。何千年もの歴史がある町で、岩をくり抜いてつくった住居が並んでいました。要するに洞窟ですね。本当に珍しい街並みで、まさに『007』のシーンの中にいるのだと感じられる素晴らしい景観でした。その街を背景に、見事なカーチェイスの撮影が行われました。


個人的な旅行や休暇のときも、お仕事と同じような方法で写真を撮るのですか?

多少同じ部分もありますが、異なる部分が大半ですね。しかし、仕事のときもプライベートな写真と同じように撮ろうと努めています。相手から人間味のある反応を引き出すには、友人に接するように振る舞う必要があります。いい質問をすればいい答えが返ってくるのと同じです。もちろん、簡単にはいかないこともあります。被写体の心をつかまなければなりません。

" 他の誰かのように撮ろうとしてはいけません。何かのかたちであなた自身やあなたの個性が反映された写真を目指してください。"


写真愛好家のために、アドバイスをひとつお願いします。

被写体に思いやりを持ってください。心の底からの思いやりです。裏の意図を持っていると、共感力のある人に察知されます。被写体の行動に対して、曲解したり不純な動機を持ったりせず、思いやりのある視点を持って相手の世界に入っていけば、相手も心を開いてくれます。そして、あなたらしい写真を撮ってください。他の誰かのように撮ろうとしてはいけません。何かのかたちであなた自身が反映された写真、あなたの個性や、あなたにしかないユニークな世界観が反映された写真を目指してください。


旅行者として、初めて大冒険をしたときの体験をお聞かせください。

19歳のときに友人と一緒にタイに行きました。そこから密かにビルマにわたり、カレン族ゲリラとビルマ軍の紛争を撮影しました。1992年のことです。本当に大冒険でした。

何度も訪れる場所や、好きなタイプの景色はありますか?

残念ながら、ありません。あればよかったですが。もし、もっと時間があったら、アフリカで野生動物と一緒にゆっくり過ごしたいですね。

お好きな都市をひとつかふたつ、挙げてください。その理由も。

好きな都市はニューヨークとロサンゼルスです。ロサンゼルスが好きな理由は、仕事と光です。ニューヨークには以前住んでいて、とてもいいところでした。世界最高の街じゃないでしょうか。ベネチアも非常に私好みの街です。毎年、映画祭に行きますが、私の人生を振り返ってみると、いい写真が撮れたと思うものの何枚かは、ベネチアで撮ったものです。写真映えする街なんですね。

どんな種類の料理がお好みですか?

アジア料理か、アジア系料理ですね。すし が好物ですが、アジア料理なら何でも好きです。次に好きなのは、中東の料理かな。

グローブ・トロッターを持って行った旅先で、最も遠いのはどこですか?

おそらくロサンゼルスです。それ以外は主にヨーロッパが多いので。グローブ・トロッターには想像以上物が入れられるのがいいですね。たくさん詰め込んで、男が3人がかりで上に乗ってふたを閉めてもびくともしません。それに、レザーストラップがあるので急に開く心配もありません。レザーストラップのおかげで、グローブ・トロッターは、私がこれまで持ったどのスーツケースよりもセキュリティがしっかりしています。ブラックに真鍮金具の付いたケースを4つ持っていますが、自分のイニシャルを入れてあるので、どこへ持って行ってもはっきりと見分けられます。すぐに注目されます。

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あなたのパッキングスタイルは?

家を出る1時間前に荷造りをすることにしています。前日に荷造りをしたら、そこから旅が始まってしまいますから。前日を荷造りでつぶしたくないのです。

旅に必ず持って行くものは?

マーマイト(訳注:イギリスで広く食べられている発酵食品)をひと瓶と、ゴーグルです。どこへ行っても、必ず泳ぐんです。

映画『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』は10月1日から日本で劇場公開されています。グレッグ・ウィリアムズさんのインスタグラムはこちらからアクセスできます。

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