トップスタイリストとして高い知名度を誇るトム・スタッブスさん。
かつて「フィナンシャル・タイムズ」紙で長くコラムニストを務め、現在はメンズファッションサイトtherowstance.comも展開しています。
スタッブスさんにとって、グローブ・トロッターの30インチケースは仕事の(遊びでも)必需品とのこと。
そして、旅に行くときの靴はグッチのスナッフルローファーを持って行くそうです。
Photography courtesy of Tom Stubbs
いつからグローブ・トロッターをお持ちですか?
2012年からです。
その年の休暇にインドに行くときに、ブラックのセンテナリーを「試運転」してみようと思い立ちました。
33インチと30インチを持っていたので、どちらのサイズがいいか迷ったのですが、結局30インチのケースに決めました。
そしていよいよムンバイに着いたとき、大変なことに気が付きました。
ヒースロー空港で保安検査を受けたときにケースの鍵をトレーの上に出したまま、取り忘れてきてしまったんです。
仕方なく私は、ビーチへ向かうガールフレンドを尻目に、スーツケースの鍵を開けてもらえると言うエリアにリキシャで向かいました。
行ってみるとちゃんと店があり、持ち込んだグローブ・トロッターを見事に開けてくれました。
これには興奮しましたね。
こんなすごい職人技が見られるなら、ホテルのプールに行くよりずっと面白いじゃないかと思いましたよ。
しかも、あっという間に合鍵まで作ってくれました。
何もないところから、ですよ。
その時の30インチのケースと鍵は、今も持っています。
当時使っていたブラックのグローブ・トロッターはふたつとも今も現役で、撮影旅行には必ず持って行きます。
使い込んでいるのでかなりくたびれていますが、こういう存在感のある「小道具」を持って撮影に現れたら、迫力があるでしょう?
しかも十分な大きさがあって荷物がたくさん入るのも有難いことです。
靴なんか、箱ごと入れられますから。
その後、グローブ・トロッターのコレクションは増えましたか?
ええ。
その数年後、フィレンツェ、ミラノ、パリなどのファッションショーに出かけるときのために、スマートなセンテナリーのケースをふたつ新調しました。
グレーにバーガンディーのレザートリムの同じデザインのものをふたつ(この色合わせは、1982年ごろから私のお気に入りです)。
以前と同じ30インチのケースに、今度は20インチのキャリーオントロリーケースという組み合わせです。
私の身長は6フィート(約183cm)なので、30インチのケースがぴったりなんですよ。
駅のホームや空港で椅子代わりに腰をかけることもできるし、必要なら肩にも担げるし(川を歩いて渡るときとかね)、スーツの上着もたたまずにぴったり入りますし。
しかもビジュアルのインパクトが素晴らしい。そこが大きなポイントです。
昔からのクラフトマンシップが詰め込まれているからこそ、どんな人にもアピールするのだと思いますよ。
あなたにとって、夢の旅行先はどこですか?
サルディーニャ島のブドーニ海岸で泳いだのはとてもいい思い出です。
私は泳ぐのが大好きで、泳げない休暇なんて、休暇じゃないと思っています。
最初にここを見つけたのは数年前のことですが、その後、一緒に行きたい女性が現れたので、去年もう一度行きました。
オルビアから少し下ったところにあるビーチで、岩の多い地形で土は赤茶色なのですが、海は信じられないほどきれいなターコイズブルーなんです。
そう言えば、初めて行ったときに、とてもおもしろいことがありましたよ。
私はときどき俳優のエドワード・ノートンに間違われることがあるのですが、あのときもそうでした。
ラ・タヴェルネッタというレストランに行ったら、みんなが私をエドワード・ノートンだと思い込み、いくら違うと言っても、どうしてもビールをおごると言って聞かないんです。
ブドーニが好きになったのには、このできごとが影響しているのは間違いないでしょうね。
最後にひとつ付け加えておくと、結局そのときの女性とはうまくいかず、現在、新しいガールフレンドと新しいビーチを探しているところです。
ただしエドワード・ノートンっぽさはそのままキープしておきたいですね。
これまで滞在した中で、最高のホテルは?
ホテルではないですが、1990年代にイビサ島のマヌミッションというイベントで夜を明かしたことがあります。
そりゃもうクレイジーでしたよ。
朝の4~5時からイベントが始まって、レジデントDJのデレック・デラージが仕切っていましたが、楽しけりゃ何でもいいっていう感じで盛り上がっていました。
私も、心から解放されたいと思って参加したんです。
反対に、ちゃんとしたホテルということで言えば、インドのケーララで滞在したゲストハウスがよかったです。
庭がとても美しくて、南インドのベジタリアン料理が楽しめました。
シンプルだけど素晴らしいところでした。
行ったことがないところで、最も行ってみたいのはどこですか? それはなぜですか?
コルシカ島に行きたいですね。
行ったことはありませんが、私がコルシカ島に対して持っているイメージが正しいのかどうか、この目で確かめてみたいと思います。
ワイルドなロマンスの予感もしますしね。
私は、険しい風景の中で豊かな文化が育っているようなところが好きなんです。
コルシカ島は地理的にも恵まれているので、ワインや食事もおいしいと聞いていますが、私がいちばん期待しているのは風景と海です。
休暇に出かけるとき、グローブ・トロッターに必ず入れていくものは何ですか?
休暇旅行なら、水着、履き古したランニングシューズ、ゴーグルです。
朝、海でランニングをするためです。
それから、カモミールティーを大量に。
これは家のことを思い出すためです。
あとは、タンクトップもたくさん持って行きます。
お気に入りは、フランスの老舗ブランド、アルモーリュックスのブルトンストライプのリブ編みのものです。
本当は女性用なのですが、私にはぴったりなんですよ。
サンスペルも愛用しています。
サンスペルのコットンTシャツはいいですよね。
それからイー・タウツのビッグワイドジーンズ。
グッチのスナッフルローファーも2、3足、必ず持って行きます。
ローファーだと、靴ベラ(シューホーン)も持って行くことになるんですよ。
空港で靴を脱がなきゃならないときがありますからね。
で、空港で靴を脱がされることを、私は「最後の警告(ホーンアルティメタム)」と呼んでいます。
あとは、シャツをたくさんと、夜の外出のためにキャサリンハムネットのシルクのバギーパンツとシャツ。
サッシュが付いたコノリーのワイドパンツも愛用しています。
ハイウエストで、歩いたときにスイングする独特の感じがいいんです。
ノンウォッシュデニムとホワイトデニムがあり、新たにシャンブレーのものも登場しました。
以上のようなものが、休暇の必需品ですね。
では、仕事で出張するときは、グローブ・トロッターに何を入れますか?
国内でも海外でも私の得意分野はテーラーリングで、テーラーの聖地であるサヴィルロウには思い入れがあります。
幸運にも、ナッター/セクストン(つまりエドワード・セクストンとトミー・ナッター)の系列のテーラーと仕事をしましたし、その後ティモシーエベレストやトムスウィーニーのふたりとも仕事をしました。
彼らはみんな非常に素晴らしい服を作り、私もたくさん持っています。
冬の装いとしては、アンダーソン&シェパードがフランネル生地で作るソフトショルダータイプのクラシックなスリーピースがとても好きで、それに大判のスカーフとベレーを合わせます。
出張のときは30インチのグローブ・トロッターにスーツを入れて行きます。
30インチのケースは、スーツを入れるのに最高なんです。
2~3着がぴったり収まりますから。
これ以上小さいケースだと、上着を折りたたまないと入りません。
しかし、ひとつ強調しておきたいのですが、いくら仕事中であっても、いかにも仕事をしていますという格好はしたくないんです。
だから、アイボリー、タバコ、ベビーピンク、シナモン、ボーン、カプチーノといった色や、映画に登場しそうな幅広のチョークストライプなどの柄を着ます。
全くビジネスライクではないですけどね。
旅行のときによく身に着ける時計はありますか?
旅行のときも含め、普段からタグホイヤーのクロノグラフ(ストップウォッチ付き腕時計)、モンツァを着けることが多いです。
料理をするときも使いますよ。
野菜やパスタやアサリなどの茹で時間を計るのに便利なんです。
またタグホイヤーにはNATOという交換用バンドがあるので、洋服に合わせてバンドの色を替えたりもします。
ビーチに行くときはトランクスとコーディネートしたりね。そ
れからこの前、ローラスのミッキーマウスの中古を衝動買いしました。
一目ぼれしたので。次の旅行はミッキーと一緒かな?
スタイリストとしての視点から、最もおしゃれな国はどこだと思いますか?それはなぜですか?
日本でしょうね。
日本には、本当にファッションが好きで、着こなしの上手な男性がたくさんいます。
少なくとも彼らは、とてもおしゃれだと思いますよ。
私から見ると、外国のスタイルを取り入れて、それらをうまく融合して自分のものにしてしまう能力が高いと思います。
イギリスのパンクファッションも高級紳士服も、どちらも着こなしてしまうんです。
以前ファッションショーの会場で、日本のブランド、ユナイテッドアローズの鴨志田さんというクリエイティブディレクターに会ったことがありますが、完璧な着こなしでした。
パテックフィリップのゴールデン・エリプスのウォッチをしていましたが、そのバンドがネイビーで、履いているレザーのローファーもブルー。
おしゃれですよね。
そう言えば、グローブ・トロッターも日本の方と、強いつながりがありますね。
興味深いことです。
最高の食事をした旅行先は、どこですか?
東京の近くの箱根というところで、旅館に泊まったときですね。
到着してチェックインすると、いかにも日本らしい伝統的な服が部屋に用意されていて、それに着替えるんです。
食事は一品ずつ運ばれてきます。
本当に、次から次へと出てくるんですよ。
あの夜の食事は、どこか精神性を感じる体験でした。
窓の外の暗闇で木々が揺れていて、私はシンプルな日本建築の中で食事をしている。
私はいつも、ひとりでいる時は、旅行用のスピーカーから音楽を流すのですが、山の中で過ごしたあの夜は、究極の美と平穏に満たされた部屋の中で、この特別な静寂を汚してはならないと思いました。
静けさの中で座っていることが本当に心地よかったんです。
旅館と言えば、正反対の経験をしたこともありますよ。
京都の郊外でしたが、70年代にできたというボロボロの旅館で、宿泊客は私ひとり。
とても怖かったので、グローブ・トロッターをバリケードにして部屋の中からドアをふさいで寝ました。
最後の質問です。グローブ・トロッターをもうひとつ手に入れるとしたら、どれがいいですか?
自分だけのオーダーメイドのものが欲しいです。
グローブ・トロッターにはビスポークサービスがありますが、それこそが、私にとっては最高の贅沢です。
自分だけのオリジナルの鞄ですからね。
あるいは、サファリもいいですね。
特に、アイボリーにナチュラルレザーのストラップとコーナーが付いたものは、私がいつも着る、とんでもない色のスーツにも合いそうです。
でも、もしビスポークで作れるのならそれをちょっと変えて、30インチのエクストラディープのサファリを選び、レザーの色をナチュラルではなくコーラルにします。
それから、ライニングは……
今ちょうど、ワイマール美術の感じにハマっているので、もし可能なら、ジャンヌ・マメンかオットー・ディクスの絵から取った色を使いたいですね。
とてもきれいな色ですから。
ライニングは、グローブ・トロッターを開けたら必ず目に入るものなのですから、とても大事だと思いますよ。
しかもグローブ・トロッターはインテリアの一部にもなりますよね。
物を入れて、そこに置いてあるだけで、部屋の雰囲気がよくなります。旅行中、私はいつもグローブ・トロッターをベストポジションに置いて、チェストとして使います。
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