グローブ・トロッターのヴァニティケースは在りし日の贅沢な時代を彷彿とさせる究極のラグジュアリーアイテムと言えます。華麗かつ大いに実用的な定番トラベルアイテムの起源を探ってみましょう。
ヴァニティケースはフェミニンなアクセサリーだと考えられがちですが、実は、少なくとも英国においては、元々男性のためにデザインされ、18 世紀末頃にファッショナブルな男性用アイテムとして流行りました。当時は「ドレッシングケース」として知られ、贅沢な素材を使用し、コロン、シェービングクリーム、くし、マニキュア用品など男性化粧品類を整理収納できる仕切りを設けるなどして、美しく仕上げられた精巧な手工芸品でした。
しかし、フランスは一歩先を行っていました。フランスではすでに 14 世紀に「Nécessaire de Voyage」(単にNécessairesと呼ばれる場合もある)の文化が開拓され、旅文化が華やいでいました。当時のトラベルケースは王室や貴族のために作られ、旅の必需品が進化していくと同時にケースのデザインもより豪華な様相となっていきました。カトラリー、文房具、裁縫用品、さらにはろうそく立てまで、様々なアイテムを運ぶことができるよう、細かな仕切りが設けられました。
おそらく最古のヴァニティケースは、ツタンカーメン王の墓の発掘で一躍有名となった考古学者、ハワード・カーター氏によって発見され、3,000 年以上も前のものと考えられているものです。象眼が施された杉の箱は古代エジプト王の墓の中で発見され、軟膏薬用の石壺、香水、おしろい、研磨された金属の鏡面と金の飾りが施された木製ハンドルが付いたハンドミラーなどが入っていました。美しく在りたいという欲求は決して最近だけのものではなく、人間にとって原始的欲求であると捉えることができる発見でした。
ビクトリア朝時代の初期になると、「男らしい」ファッションとしてフリル付きのリネンシャツや巻き髪のかつらが流行り出しました。この流れの中でドレッシングケースは時代遅れのアイテムとなりました。しかし、同時に、旅の黄金時代を楽しみ始めた女性たちによってケースの人気は復活しました。よりフェミニンなデザインを擁するようになり、女性向きの仕様へと変わっていくと、「ヴァニティケース」として呼ばれるようになりました。
実用的でありながらも、ヴァニティケースのデザインはデカダンスを感じるアンティークなスタイルであり続けました。しかし、1920 年代に女性の自立の動きが芽生えると(当時、若い女性が公の場で喫煙したり化粧をすることが初めて社会的に受け入れられるようになりました)ヴァニティケースに新たな要求が課せられました。それまでの大きくてかさばるモデルに替わり、新たに作られるようになった携帯用のモデルはアールデコのスタイルを踏襲したスマートでスリムな形へと変貌を遂げました。カルティエやヴァン クリーフ&アーペルなどのハイジュエリーメゾンによって制作された新型ヴァニティケースは、マザーオブパール、べっ甲、翡翠といった様々な宝石などを使用したゴージャスなディテールに富んでいました。シャルル・アーペル(ヴァン クリーフ&アーペルの共同創業者)は、彼の友人であるアメリカの資産家フローレンス・グールドが、口紅、煙草のライター、パウダーケース、そして数枚の紙幣をラッキーストライクの缶の中にまとめて投げ入れる姿を見て新型ヴァニティケースの着想を得ました。そして女性がすべての必需品をひとつのスタイリッシュなケースにまとめて収納し、携帯できるスリムなヴァニティケースが誕生しました。
今日においてもヴァニティケースの人気は衰えることがありませんが、ラグジュアリーアイテムというよりは、そのスタイルやお手頃な素材(そして究極的には価格)によって、より実用的なアイテムとなりました。
実際、グローブ・トロッターは贅沢な素材を使い、アンティークなデザインに仕上げた携帯用のヴァニティケースを手作りする、今や数少ないブランドのひとつです。1960 年代よりグローブ・トロッターでは多くのヴァニティケースのモデルを発表して参りましたが、現行モデルは 1997 年、「センテナリー」コレクションの誕生と共に発表され、以来、コレクションの主要アイテムのひとつであり続けています。
13 インチ(33 センチ)サイズのグローブ・トロッターのヴァニティケースにはジュエリー類を収納するための固定トレイ、取り外し可能なミラー、そして 3 桁のコンビネーションロックが付いています。特有のボックス型はトラベルケースのスタイルを模しており、トラベルケースと同じレザーコーナー、ストラップ、そしてヴァルカン・ファイバーのボディを備えています。
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