グローブ・トロッターのデザインの背景にあるストーリーを掘り下げるケーススタディ・シリーズ。今回は、使いやすさの中に豊かな歴史を秘めたアタッシェケースに注目します。
“武器一式が格納されたジェームズ・ボンドのアタッシェケース”
歴史上最も有名なアタッシェケースと言えば、1957年のイアン・フレミングの小説『ロシアから愛をこめて』で、Q 課が007に支給したアタッシェケースでしょう。
小説は1963年に映画化され、アタッシェケースもスクリーンに登場しました。
隠しナイフ、銃弾、タルカムパウダーの容器に見せかけた小型ガスボンベ、図らずも窮地に追い込まれたときに使うための大量のソブリン金貨などが、巧みに仕込まれた特別なケースでした。
イギリスの公務員の象徴であるアタッシェケースを、特別な任務を帯びた女王陛下の公僕に持たせるというのは、なかなか味わいのある面白い組み合わせです。
なにしろスーパースパイであるボンドが持つと、ヒンジで開閉する四角い携帯品でしかない鞄がさまざまな機能を備えた武器になってしまうのですから。
“アタッシェケースの名称は、フランス語のアタッシェ(=配属される)が由来。大使館に「配属された」外交官が使っていたことから”
1953. Photo by John Chillingworth/Picture Post/Getty Images
アタッシェケースという名称は、大使館で働く外交官が多く使っていたことに由来します。
語感から分かるように、アタッシェはフランス語。
例えば文化担当の外交官が「カルチュラル・アタッシェ」と呼ばれるなど、アタッシェには「配属する」という意味があります。
また、ブリーフケースという呼び方もありますが、これは弁護士が訴訟書類(ブリーフ)を入れて運んでいたことに由来しています。
もうひとつ有名なアタッシェケースがあります。
イギリス政府が予算を公表するバジェットデーのケースです。
この日は首相官邸のあるダウニング街10番地のそばで、財務大臣がアタッシェケースを掲げることが伝統になっています。
そして豆知識をもうひとつ。
今のアタッシェケースの原型は、14世紀のイギリスでメッセンジャーが貴重品を入れるのに使った皮の肩掛け鞄だと言われています。
貴重品は「バジェット」と呼ばれていたそうです。
その後、鞄は進化を続け、ヒンジのついたカーペットバッグ、グラッドストーンバッグなどを経て、何世紀もかけて現代の私たちが知っているブリーフケースになりました。今のブリーフケースのような形になったのは、1850年代後半だということです。
“『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』でも、007はグローブ・トロッターを使っています。”
Skyfall Stabilist Case
なんとグローブ・トロッターは、007と財務大臣のどちらともつながりがあります。
『007/スカイフォール』以降、ボンドシリーズにはグローブ・トロッターがたびたび登場します。
記念すべきシリーズ50作目の『007/スカイフォール』(2012年)では、上海に現れた悪役のスナイパーがグローブ・トロッター スタビリスト ケースの部品を使ってライフルを組み立てます。
このケースはレプリカモデルが商品化され、100台限定で発売されました。
ライニングはダイヤモンド型のステッチが美しいアルカンタラ・キルト、ハンドルには映画の狙撃用スコープを模したパーツが搭載されています。
2015年の『007/スペクター』では、ボンド自身がグローブ・トロッターを持っています。
すでに発売中のコレクション「オリジナル」のブラウンのケースを持ってモロッコへ旅立ちます。
そして、今年公開予定の最新作『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』でも、ボンドはグローブ・トロッターを選びました。
今回持つのは、オーシャングリーンの「センテナリー」と、ブラックのカーボンファイバー製キャリーオントロリーケースです。
センテナリーにはブラックのストラップとトリムが、カーボンファイバーのケースにはブラックレザーのコーナーと中央にストライプのストラップが付いています。
007限定コレクションを見る
“ウィンストン・チャーチルは財務大臣時代にグローブ・トロッターを使っていました。”
28th April 1925: Chancellor of the Exchequer Winston Churchill (1874 - 1965) leaves 11 Downing Street, London, on his way to present the budget. (Photo by Kirby/Topical Press Agency/Getty Images)
グローブ・トロッターと007のつながりの深さは、映画を見ればよく分かります(新作に登場するケースは、すでに販売が始まっています)が、実は、少し意外かもしれませんが、グローブ・トロッターはイギリスの財務省とも縁が深いのです。
話は100年ほど前の1924年までさかのぼります。
かのウィンストン・チャーチルが財務大臣に就任した年です。
チャーチルは1929年に退任するまで、そう、グローブ・トロッターのアタッシェケースを使っていたのです。
“2007年にフランスのラグジュアリー・メゾン、エルメスがアイボリーのボディにライトカラーのレザートリムを施したエレガントなグローブ・トロッターを制作しました。”
最近では、グローブ・トロッターのスリムアタッシェケースはさまざまな立場の人に愛されています。
2007年にフランスのラグジュアリー・メゾン、エルメスがアイボリーのボディにライトカラーのレザートリムというエレガントなグローブ・トロッターを制作しました。
馬具商から発展したエルメスの歴史を反映して、ライニングには馬と騎手の絵が描かれました。
また、2018年にはイタリアのグッチが、フローラルモチーフをボディに描いたケースを制作。
ブラックレザーのトリムが施され、グッチのシグネチャーパターンであるグリーン・レッド・グリーンのストライプがボディを横切る華やかなケースになりました。
“グッチのフローラルモチーフをボディに施した華やかなグローブ・トロッターが制作されました。”
昨年は、ポール・スミスが14インチのミニアタッシェケースを制作。
ブラックのボディにマルチカラー(レッド、カーキ、グリーン、イエローネイビー、トープ、ライムイエロー、セージ、バーント・オレンジ、ピーコック、バーガンディ、ブライト・レッド)のコーナーと、幅広のショルダーストラップが付いたデザインです。
そして今年は、ベルルッティが同社の個性を生かしたスリムアタッシェケースを制作しました。
ボディ全体にベルルッティが新たに発表したシグネチャーキャンバスを使用。
ハンドペイントで仕上げたヴェネチアンレザーのハンドルとコーナーや、レザーストラップのほか、内部には両ブランドのロゴを刻印したニッケルプレートが施されています。
“グローブ・トロッターの定番ビジネスケースは、ボディサイズ、レザートリムのカラーバリエーションが豊富です。”
ベルルッティモデルとポール・スミスモデルは現在、グローブ・トロッターの定番モデルと同様に購入可能です。
定番のビジネスケースは、サイズ、カラーのやレザートリムのボディバリエーションが豊富。
トラベルケースにも使われているヴァルカン・ファイバーをボディに使用しているため軽量でありながら強度にも優れています。
一般的なA4サイズの書類はもちろん、ノートPCやその他の電子機器など、現代社会に不可欠なアイテムを大切に収納します。
“内部には、ペンや書類を収納できる着脱可能なフォリオを搭載しています。”
アタッシェケースには、セキュリティを確保するために、鍵で開閉するロックが付いています。
また内部には、ペンや書類を収納できる着脱可能なフォリオや、両サイドにケースを開けたまま固定できるようメタルアームが搭載されています。
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