ブリティッシュ・エアウェイズ 747 の引退を記念して、グローブ・トロッター独自のデザインによる限定版のスーツケース・コレクションが発売されました。
イギリスの航空史に名を残す偉大な名機を記念した特別なコレクションの誕生秘話と、「空の女王」と呼ばれた747航空機の輝かしい歴史をご紹介します。
グローブ・トロッターを引いて空港を歩き、搭乗機に乗り込むプロセスは、いつも心に残る旅の一コマです。
空の旅とグローブ・トロッターの関係は切っても切れないものですが、長いあいだ続いてきたそのつながりを初めて形にしたのが、今回のブリティッシュ・エアウェイズとのコラボレーションです。
ブリティッシュ・エアウェイズの 747 航空機の引退は、一抹の寂しさを感じるニュースでした。
この知らせを聞いたグローブ・トロッターは一時代を築いたこの名機を讃えるため、記念デザインのBOAC Speedbird 20 インチ トロリーケースをデザインしました。
Image courtesy of British Airways
BOAC Speedbirdは世界で 150 台限定の受注生産となります。
ブリティッシュ・エアウェイズとグローブ・トロッター初のコラボレーションモデルであるこのケースは、アイコニックなBOAC(ブリティッシュ・エアウェイズの前身となった英国海外航空)のカラーリングを表現したパールホワイトとダークブルーを組み合わせたボディに、BOACのオリジナルエンブレムである「スピードバード」がゴールドでスタイリッシュに描かれています。
ふたを開けると、通常グローブ・トロッターのメタルプレートを施す位置に取り付けられているのが、747 の機体から切り取られた小さなプレート。
まさに特別なケースである証です。
“ふたを開けると747の機体から切り取られた小さなプレートが取り付けられた特別なケースです”
「ジャンボジェット」の愛称が生まれるきっかけになった 747 航空機は、単に大型化に成功した、あるいは高度なテクノロジーを使っているというだけでなく、空の旅をすっかり変えた画期的な航空機でした。
1970 年 1 月に商用フライトを開始して以来、その大きさはどこの空港でも人々の注目を集めましたが、747 が優れた旅客機の代名詞になれたのは、747 で旅をする乗客の快適さこそが最大の理由でした。
Image courtesy of British Airways
747 は、ジェット機では初めてのワイドボディ機です。
1977 年にスティーブ・ミラ―・バンドが歌った Jet Airliner の曲の中での‘big ol’ jetliner’そのものです。
しかし、1968 年の 9 月に試作機の RA001 のプロトタイプが格納庫から出てきたときにも、その将来性は疑わしいものでした。
当時の最大の航空機に比べても 2.5 倍という大きさで、400 人以上の乗客を運べるこの新型機には、資産家の生まれで大胆な性格で知られるファン・トリップ氏率いるパン・アメリカン航空から25 機、BOACを含む他の航空会社から合わせて 25 機の発注がありました。
製造元のボーイングは、この大型受注をなんと 28 ヶ月で完成させることを決めます。
そして、資金と人員をなくしてしまったのです。
“ 747 は、空の旅をすっかり変えた画期的な航空機でした”
なぜそんな決定をしたのでしょうか。
それは、ボーイングが 747 を古い時代の最後の旅客機だと考えていたからです。
これからはコンコルドやボーイング 2707SST など超音速旅客機の時代になると予測していました。
一方で、貨物便では従来の速度で飛ぶ航空機のニーズは続くため、それを取り込めば 747 の製造も採算が取れます。
そこで技術者たちには、貨物機に転用できる設計にすることが命じられました。そのことが、結果的に 747 の特徴的な丸い胴体の設計につながったのです。
BOAC 747 Taken: 18th February 2019 Picture by: Stuart Bailey
設計チームは、荷積みを効率的に行うには、機首の先端部分を開閉可能にして大きな開口部を設けることが最適だという結論を得ました。
しかしそうなると、操縦席をどうするかが問題になります。そこで機体の上部に盛り上げる形で操縦席を配置することで問題を解決しました。操縦席の高さは地上から約 10 メートル。
最初は不安を感じるパイロットもいたようです。
外形を整えるために操縦席の形を機体に沿って広げ、機内の一部を2階建て構造にしたことで客席が増えただけでなく、メインキャビンから 2 階デッキまでらせん階段を取り付けるなど、これまでになかった個性を持たせることもできました。
こうして 747 はあの独特の、愛嬌のあるシルエットになったのです。
このように開発当初から超音速旅客機の脅威にさらされていた 747 でしたが、誰もが知るとおり、騒音と公害への懸念が原因となって超音速旅客機の脅威は後退していきました。
もしも、最先端のシャープなシルエットながら、機内が窮屈で高額な運賃のコンコルドがアメリカのフラッグシップ機になっていたら、3 ~ 4 種類ものクラス運賃を設定した747型機は、昔ながらの豪華客船のような位置付けになっていたでしょう。
かつてブリティッシュ・エアウェイズは 747 を「クイーン・オブ・ザ・スカイ(空の女王)」と呼びましたが、念頭には偉大な客船のクイーン・メリーやクイーン・エリザベスがあったに違いありません。
豪華客船のように安心で、安全で、その大きさゆえに非常に安定したフライトを叶えてくれる航空機という意味だったのだと思われます。
コンコルドが未来的なエレガンスを象徴しているとしたら、747 には「威厳」という言葉がふさわしいでしょう。
そして 747 にはもうひとつ、大きな利点がありました。
運賃の安さです。
“コンコルドがエレガンスを象徴するならば、747 にふさわしい言葉は「威厳」です”
広いキャビンを 2 本の通路が通り、エコノミークラスでは 1 列 10 席というコンフィギュレーションも可能なため、黒字を確保したままかなりの低運賃で運航できるようになりました。
ロンドンからニューヨークへの往復運賃は 100 ポンド(約 1 万 4000 円)以下まで一気に下がり、乗客数は就航からわずか半年で延べ 100 万人を突破しました(現在は 40 億人を記録しています)。
一般の人々が最新の航空機に乗って快適に空の旅を楽しめるようになったため、運賃の異なる複数のクラスを設定しているにもかかわらず、平等な乗り物だと評価されました。
BOAC 747 Taken: 18th February 2019 Picture by: Stuart Bailey
それから 51 年、今、747 はその役目を終えることになりました。
ブリティッシュ・エアウェイズは 2019 年の創立 100 周年を記念して機体に復刻塗装を施しました。
そのうちの 1 機、BOACの塗装を施した 747 型機は 2019 年 12 月 11 日にラストフライトを迎え、カーディフ空港を飛び立ちヴェール・オブ・グラモーガンのセント・アサンに向かいました。
ブリティッシュ・エアウェイズのすべての 747 型機の最後を飾るこのフライトには、敬意を込めて「BA747」という便名が付けられました。
“運賃の異なるクラスを設定していても、すべての人が最先端の快適な空の旅を楽しめる平等な乗り物だと評価されました”
同機の引退をもって、ブリティッシュ・エアウェイズの塗装を施した 747 航空機は、復刻塗装も現在のデザインも含め、もう見られなくなりました。
しかしグローブ・トロッターの限定版ケースには、747 航空機の思い出として機体から取り外したプレートが取り付けられています。
幸運にも限定版のオーナーになった 150 人は、747 の忘れ形見とともに旅をしながら、かつて大空を支配し、私たちを旅に夢中にさせた偉大で優しい空の女王を思い出すことでしょう。
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