グローブ・トロッターの最新のコラボレーションモデルは、定番のセンテナリーを世界で最も有名な高級服地メーカーのひとつ、ヴィターレ・バルベリス・カノニコの自然素材生地でカバーした特別なケースです。
1663年にイタリアのビエッラで創業した老舗ブランド創業家の13代目で、クリエイティブ・ディレクターのフランチェスコ・バルベリス・カノニコさんにお話をうかがいました。
イタリアのトリノから北に80キロほど離れた町、ビエッラ。ここで350年以上前から服地を作り続けているのが、ヴィターレ・バルベリス・カノニコです。
イタリアで最も古く、最も有名なメーカーのひとつで、その製品の美しさは世界でもよく知られています。
現在も創業家による経営が続いており、世界各地で200年以上続くファミリー企業だけが加入できるエノキアン協会にも加盟しています。
今回のグローブ・トロッターとのコラボレーションでは、イノベーション、クラフトマンシップ、エレガンス、環境への積極的な配慮を大切にしてきた同社の精神が強く表れたケースが実現しました。
使用しているのは、ナチュラル・ファイバー、リサイクル・ファイバー、植物由来のファイバー、サステナビリティを重視したH.O.P.E.コレクション。
サイズは、小さいもので7インチのロンドンスクエア(キャメルチェック柄のウール生地のボディに、タンレザーのトリム)、そして14インチのミ二アタッシェケース(チャコールチェック柄のウール生地のボディに、ブラックレザーのトリム)、20インチトロリーケース(ナチュラルへリンボーン柄のアルパカ生地のボディに、バーガンディーレザーのトリム)の3種類で展開しています。
ケースの内側には、H.O.P.E.コレクションの証であるレザーのラベルが施されています。
フランチェスコさん、よろしくお願いします。フランチェスコさんは、バルベリス・カノニコ家の13代目に当たりますが、最初から家業を継ごうと考えていたのですか?
いいえ、全く。若いころは、音楽をやりたいという夢を持っていました。
今でも音楽は大好きです。
後にロンドンに引っ越して、とてもおしゃれな男性たちの存在に目を引かれました。
スマートなチョークストライプのスーツを着た政治家や、メイフェアを闊歩するおしゃれな男性たちです。
そこで、私もロンドンで服を新調しようと思ってテーラーを探し、サヴィルローの近くの店を見つけました。
そうやってスーツをあつらえるようになったため、生地選びをきっかけに、家業に改めて興味を持つようになったのです。
結局、遺伝子には勝てないということでしょうか。
今ではこの商売も自分の役割も気に入っています。
私がスーツを初めて作ってもらったのは20年ほど前の1998年ですが、そのころはイギリス製の生地は重いと感じてイタリア製の生地ばかり選んでいました。
今はどちらも好きになりましたが。
ヴィターレ・バルベリス・カノニコは創業350年以上という伝統ある老舗です。こんなに長い間事業を続けてこられたのは、なぜだと思いますか?
簡単ですよ。
常に時代に合わせて変化し、その時に必要とされる商品を提供し続けてきたからです。
有難いことに、イタリアの製造業には高い技術を持つ素晴らしい職人がたくさんいます。
しかし皮肉かもしれませんが、当社の生地製造の一部にはイギリス流の方法も採用しているんですよ。
それによって構造がしっかりした安定した生地になるからです。
価格は気にしません。
それよりも品質優先で、考えられる最高の糸を作るために、最高の材料を調達します。
そうやって常に世界最高レベルの生地を作ってきたんです。
貴社でとりわけ有名な製品はどれですか?
昔はウールとモヘアが非常に有名でした。
しかし今は、通年で着られるスーツ生地のスペシャリストとして知られるようになりました。
生地の軽量化もずいぶん進んでいますが、これは重要なポイントです。
気温の高い地域に住んで仕事をするお客様もいますし、頻繁に旅行をするお客様も多いですから、重い生地は好まれないんです。
服地も変化した、ということでしょうか?
そのとおりです。性能もずいぶんよくなりました。
今のスーツは、何日か連続して着てもアイロンがけが不要です。
だから旅行にスーツをたくさん持って行く必要がないので、私が旅行するときは、小さなトロリーケースをひとつで十分なんです。
貴社の服地のデザインは、イタリアらしさが強いと思いますか?
そうですね、そう思います。世界中の人が、イタリア人はとてもおしゃれだと言ってくれているのは、当社にとっては有難いことです。
当社は世界各地のデザイナーやテーラーに服地を納めていますが、その方々が言うには、イタリアの生地を買ったお客様は、まるでイタリア人になったような気分なんだそうです。
つまりヴィターレ・バルベリス・カノニコを買うことは、イタリアの小さなひとかけらを買うことなんですね。
それはグローブ・トロッターも同じです。
私がグローブ・トロッターを愛用する理由のひとつは、イギリス人になったような気分になれるからです。
私はイギリスの信奉者なんですよ。
グローブ・トロッターを愛用されているとおっしゃいましたが、たくさんお持ちなんですか?
グローブ・トロッターの大ファンなので、スーツケースをいくつかと、ネイビーブルーのブリーフケースをひとつ持っています。
非常に頑丈に作られているところが素晴らしいですね。
グローブ・トロッターを買うことは、投資のようなものです。
使えば使うほど時代がつき、つやが出て美しくなる。
古くなって味わいの出てきたフランネルのスーツをおしゃれに着こなしている紳士のようですね。
その人の人柄を感じます。
お持ちのグローブ・トロッターは、ふだんから使っていますか?
ええ、いつも使っています。特にトロリーケースはとても便利です。
車で移動するときは、全部持って行きますよ。
私のケースは、レッドやオレンジの華やかな色が多いんです。
何よりいいのは、中に入れた洋服がつぶれないことです。
ヴィターレ・バルベリス・カノニコが誇る美しい生地がつぶれないわけですよ。
他のスーツケースは圧迫に弱いので、中身がつぶれたボールみたいになってしまいます。
グローブ・トロッターは軽くて頑丈なので、詰めすぎにさえ気を付ければ、洋服の形が崩れてしまうことがありません。
とても実用的だというわけですね。ところでフランチェスコさんは高い美意識をお持ちですが、見た目の良さについてはいかがですか?
適当にスーツケースを買ったら、たまたまグローブ・トロッターだった、という人はいないでしょう。
グローブ・トロッターを買う人は、その品質と美しさに魅かれ、あえて買うわけです。
だからイタリアでも、パリでも、ストックホルムでも、グローブ・トロッターを持った人と出会うのは、いつも特別なことなんです。
こだわりの美意識を持った人だと分かるからです。
ふだんの旅行の習慣についておうかがいしようと思います。お気に入りの都市はありますか?
ロンドンですね。
ロンドンは歴史のある街で、しかもテーラリングの長い伝統があります。
サヴィルローやジャーミンストリートへ行くのは楽しいですね。
貴族の紳士が、父や祖父から受け継いだ古いジャケットを実にさりげなく着ていたりするような、イギリス人特有のふるまいも好きです。
ですから、仕事で行っても遊びで行っても、とても楽しめます。
非常にイギリス的でありながら、一方で国際的でもある、両方が入り混じった個性的な街がロンドンなんです。
今後行ってみたい旅行先は?
いつかアフリカに行ってみたいですね。
アフリカにはおもしろい文化がたくさんあって、とても勉強になります。
アフリカは将来、今のアジアのようになると思いますよ。
これまで宿泊したホテルで、最高のホテルは?
ロンドンのリッツ、それから、カンヌのマルティネスも忘れてはいけませんね。
1930年代のアールデコ装飾が素晴らしいホテルです。
私はクラシックホテルが好きなんです。
最近のミニマリスティックなホテル、どこもかも白くて、家具をひとつも置いていないようなホテルはあまり好きではありません。
旅先で食べた食事で、最高のものは?
ロンドン、ジャーミンストリートにあるウイルトンズの魚料理は最高です。
とくに舌平目はお勧めです。
肉料理なら、ウィーンのプラフッタでしょう。
肉が入った鍋を小さなコンロにのせたままテーブルまで運んできて、サーブしてくれます。
古くからある店で、非常にどっしりとした典型的なドイツ料理を出します。
ポテトを添えてくれますから、健康的ですよ。
バーはどうでしょう?
またロンドンになってしまいますが、ヒルトン・オン・パークレーンの最上階にあるウインドウズがお勧めです。
眺めが素晴らしいので。
旅先では、どんなところで買い物をしますか?
それは、何を買うかによります。
洋服はすべてロンドンかニューヨークかミラノであつらえます。
正統派の店で、かつ魅力のある店が好きです。
例えばセント・ジェームズにある帽子店のロック&コーもそのひとつですね。
蒸気を当てて帽子の形を整えてくれるんです。
他ではなかなか体験できないことですよね。
しかし最近は、地元のテーラーに行くことも増えました。
もうすぐ90歳というベテランのテーラーで、今では私と、それから彼自身の息子たちの服だけを作っています。
バルベリス家では、祖父、父、私と3代続けてお世話になっています。彼が住んでいるのはプラトリヴェロという小さな町で、我が社の工場もそこにあるので、仮縫いが近くで済ませられるのは便利です。
旅に必ず持っていくものは?
グローブ・トロッターのケースは必須ですね。
次に、仕事で出かける場合は、金ボタンがついたネイビーブルーのブレザーを必ず。
夏でも冬でも使えますし、ワードローブに1着あると大活躍しますから。
中にシャツを着てネクタイを締めればきちんとした印象になりますし、バーやパブに行くときは、ネクタイをはずします。
合わせるボトムスは、ジーンズでも、フランネルのパンツやコットンのパンツなど、何でもなじみます。
品のいいハンカチーフを添えると華やかにもなります。
ブレザーは私の人生の必需品です。数え切れないくらい持っていますよ。
それから、ジャケットも愛用しています。
私たちは女性と違って小物用のバッグを持ちませんが、ジャケットなら携帯電話や財布、鍵などを入れられますし、きちんとして見えますから。
土曜日や日曜日でも、何かはおるものがあると安心ですよね。
ただし、仕立てのいいものに限りますが。
その他に持って行くものといえば、ヘッドホン、フランネルか厚地コットンの履きやすいパンツ。
一時はスキニーが流行って何もかも細身でしたが、私は細身のタイプが好きではないので、最近は適正な幅にもどりつつあるようでほっとしています。
それからイギリス製の靴を1足。
チャーチ、クロケット&ジョーンズ、ジョン・ロブなどです。
イギリスの靴は、足を入れるときはきつく感じますが、履いてしまうととても快適です。
あと、ブリーフケースも必ず持って行きます。
“私の友人は飛行機でこのグローブ・トロッターのブリーフケースを持ってきてくれました。これは私たちの友情の証です。”
グローブ・トロッターのブリーフケースですか?
そうです。実は、そのブリーフケースには、感動的なエピソードがあるんです。
うちの家業が350周年を迎えたときに大きなイベントを開催したのですが、その時に友人がわざわざ日本から駆けつけてくれました。
うちの祝宴のために、飛行機で20時間もかけてやって来てくれたのですから、本当に感激しましたよ。
しかも彼は「君におみやげを持ってきた。きっと気に入ってくれると思う」と言うんです。そのときに贈られたのが、美しいネイビーブルーのグローブ・トロッターのブリーフケースでした。
私は彼の友情を思い出しながら、いつもそれを使っています。
フランチェスコの荷造りスタイルを教えてください
けっこう上手ですよ。自分なりの方法が決まっているんです。
洋服を入れて、その周りに靴を入れます。
VBCの生地を使ったスーツのいいところは、アイロンが不要なことです。仮に移動中にしわがついてしまっても、ハンガーにかけておけば自然に消えます。
わざわざシャワーのお湯を出しっぱなしにしてバスルームに湿気を充満させたりする必要はなく、普通に室内にかけておけばいいのです。
当社の生地にはしわができにくい設計の特別な生地もありますが、そうでない一般の生地もこの方法で大丈夫です。
機能性生地の「スーパーソニック」コレクションを含め、大半の生地がストレッチ性に優れた強撚糸を使っていますので、しわが付きにくく、デスクワークも自動車の運転も快適にできるのです。
グローブ・トロッターとのコラボレーションに使った生地も、特別なコレクションのものですね。それについて詳しくお聞かせいただけますか?
当社が開発した環境負荷の少ないH.O.P.Eというコレクションの生地を使っています。
「How to Optimise People and Environment(人と環境を最適化するには)」の頭文字をとった名称です。
最近、サステナビリティや、自然、環境、動物を傷つけない社会の実現に関する議論が高まっていますが、当社としてもその考え方に賛同していますし、服地作りを通して貢献する方法はないかと考えました。
その結果、新しいコレクションを開発したのです。
例えばカイコを殺して絹糸を取るのではなく、ちゃんと成虫にして放してやる。
あるいは羊毛を化学染料で染めずに自然の色を生かす。
また、ウールのリサイクルにも取り組んでいますし、生分解性のオーガニックコットンを原料にした特別な製品も開発しました。
生分解性の製品は土に埋めておけば自然に分解されるので、環境に害を及ぼしません。
そのH.O.P.E.の生地がグローブ・トロッターとのコラボレーションに使われているのですね?
そうです。3種類のケースにH.O.P.Eの生地を使いました。
これは素晴らしいアイデアですよ。
天然の色が美しい素材ならば、染色は必要ないのです。
GLOBE-TROTTER x Vitale Barberis Canonico のコラボレーションケースは、ロンドンクラフトウィーク(2020年9月30日から10月10日まで)に英国バーリントン・アーケードのグローブ・トロッターフラッグシップストアで展示されました。
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