Art Of Adventure: ニューデリー

22 Apr 19

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Art Of Adventure: New Delhi - GLOBE-TROTTER

オーストラリア生まれのジャーナリスト、アールティ・ベティジェリさんは 2008年にインドに移住し、ニューデリー市で 9年の歳月を過ごしてきました。新旧が織りなすスペクタクルに包まれるインドの魅惑的な首都、ニューデリーの魅力をアールティさんが紹介します。

ニューデリーが持つ多大なる魅力は、同市で起きる災難や事件など良からぬニュースが報じられる度に忘れられがちですが、ニューデリーは世界の大都市のひとつであることには間違いありません。ニューデリーは長い歴史を誇る古い街です。実際、今日のニューデリーと同じ位置に、約 1千年前から 8つの都市が時代ごとに入れ替わり立ち替わり存在してきました。デリーの歴史はニューデリーの都市の日常と深く関わっています。古くは 500年前にも遡るムガル帝国時代の遺跡や歴史的建造物が住宅街や公園に点在します。古代遺跡は地元住民の交流の場、子どもの遊び場、学生の勉強の場として今日でも現役で使われています。また、歴史的建造物はそれぞれに独自の風合いを帯びており、中央アジアを横断しデリーに辿り着いたイスラム教のムガル帝国によって統治されていた何世紀も前のデリーを彷彿とさせるドーム型の屋根や赤い砂岩のレンガ造りが特徴的です。イギリス人の歴史学者、ウィリアム・ダーリンプル氏は次のように発言しています。「ローマやカイロでさえも、遺跡や歴史的建造物の数の多さと、都市の中に点在する密度の高さにおいてはデリーには及びません」

じっくりと時間をかけて積極的にニューデリーの隠れた魅力を発見することは、ニューデリーの都市構造に対するより深い理解、そして、より豊かな旅の経験に繋がります。 まず挙げておきたいお薦めの穴場スポットとしては、美しい光景が広がるハウス・カス・ヴィレッジ地区です。 1200年代に建設が始まったと言われている貯水湖を見渡す 14 世紀の遺跡の石群には大学生が憩いの場として集い、地元の子どもたちがクリケットに夢中になり、恋人たちが肩を寄せ合います。 私がニューデリー内で引っ越しをし、新しい景色の中で散策している途中、オールドデリーにある有名なモスクの ジャマー・マスジット(Jama Masjid)に外観も規模もそっくりな巨大な建造物を発見しました。広大な中庭を囲むようにしてイスラム建築様式のドーム型の建物が連なっており、建物にこびりついた緑青と石の組み方から察すると大変古い建築物だということは分かりましたが、不思議なことに、人はまったく見当たらず、ガランとしていました。リサーチをしてみた結果、14世紀建立のベガンプール・モスク(Begumpuri Mosque)だということが判明しました。かつては主要な市民公共施設として賑わっていたこのモスクは今や廃墟と化し、観光コースからも除外されていますが、実は大変立派で由緒ある歴史的建造物なのです。

また別の日、近所の公園で南京錠がかけられた手付かずの小さな建物に出くわしました。何世紀も前の図書館だったことだけは判明しました。当時の本がそのまま中に残っているのでは、と好奇心が湧きましたが、それ以上の真相を知る人も、知りたがる人にも巡り合うことができませんでした。結局、その建物も都市に点在する何百もの同様の古い建物のひとつでしかなく、都市の日常の中に溶け込んで静かに佇んでいるのです。 ニューデリーの歴史的建造物の中でも最も有名どころは真の芸術作品といっても過言ではありません。都心部に位置するフマユーン廟(Humayun’s Tomb)は、最近、 アガ・カーン財団文化基金の支援の元、修復工事が行われ、建設当時の外観を取り戻しました。また、フマユーン廟と同じ赤い砂岩が印象的な レッド・フォート(Red Fort) やクトゥブ・ミナール(Qutb Minar)も必見です。そして、 600年前に建設された階段井戸、アグラーセン・キ・バオリ(Agrasen ki Baoli)は、デリーの古の水道システムを知ることができる見応え十分の遺跡です。

また、ニューデリーには、活発な現代アートおよびデザインのシーンも息づいています。毎年 1月後半にはIndia Art Fair、続いて 2月にはIndia Design IDが行われ、インド現代アートおよびデザインの現状を垣間見ることができるイベントが開催されます。ニューデリーには多くのプライベートギャラリーも存在し、エキサイティングな現代アートに特化するお薦めのギャラリーとしてはNature Morte 、一方、国立現代美術館 National Gallery of Modern Artでは刺激的かつ注目度の高い展示が開催されます。

デリーは幅広い価格帯に対応する良質な宿泊施設を数多く誇ります。高級ホテルとして特筆すべきは チャナキャプリ(Chanakyapuri)の大使館エリアに建つザ・リーラ・パレス(Leela Palace)。金箔に包まれた家具、華麗なシャンデリア、そして国立美術館に引けを取らない美術コレクションを誇ります。個人経営ホテルの高級版として真っ白なアールデコ建築様式が特徴的なザ・インペリアル(The Imperial)ではデリーで最も人気のサンデーティーが堪能できます。ブティックホテルとしては、まだ新しいバンガロー 99(Bungalow 99)が挙げられます。ここに挙げた宿泊施設のすべては、中世都市デリーでの充実した観光の一日の終わりに、しっかりと 21世紀に連れ戻してくれる快適な宿泊環境を提供しています。

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