ジャーナリスト、報道キャスター、小説家と多彩な顔を持つレイチェル・ジョンソンさんは、仕事で旅先に滞在することも多いといいます。
ジョンソンさんが新人記者の頃から愛用しているグローブ・トロッターについて、また先日クイーン・メリー2で開催された「洋上のチェルトナム文学祭」に講演者として参加した際に、新たな旅に合わせてグローブ・トロッターを新調し、注目を集めた経緯についてお話を伺いました。
初めてグローブ・トロッターを買ったのはいつですか?
若い頃からずっと、ジャーナリストになりたいと思い続けていました。
あちこちを旅してスクープを取ってきたり、砂漠のテントの中でアフリカの指導者たちにインタビューをすることを夢見ていたのです。
そのころの私は、勇敢なジャーナリストの必需品はメモ帳とペン、そしてグローブ・トロッターのトラベルケースだと思っていました。
大学を卒業して幸運にもフィナンシャル・タイムズに入社できたとき、新人研修生としてもらった給料で最初に買ったのが、グローブ・トロッターの青いトラベルケースでした。
そのスーツケースを持って、どこへ出かけましたか?
あらゆるところへ持って行きました。
アフリカ、バンコク、ビルマ、スリランカ、ペルーなど、あちこちへ。
白状しますと、買ったばかりのころは遠方への取材旅行よりも、休日のスキー旅行に使うことの方が多かったですね。
でも1990年にフィナンシャル・タイムズに各国の調査記事を執筆することになったときは、バハマとイギリス領バージン諸島に持って行きました。
当時はフィナンシャル・タイムズも景気が良かったと見えて、私をビジネスクラスに乗せてくれたんです。
いつも思い出すのは、ナッソーからの帰りの空港でのできごとです。
搭乗手続きのために、ビジネスクラスとファーストクラスの乗客が同じ列に並んでいたのですが、ちょうど私の後ろがミュージシャンのボブ・ゲルドフだったんです。
彼はいかにもロックスターらしいラフな格好をして、両腕にはカラフルな刺しゅうが入ったヤシの葉のかごをいくつも抱えていました。
私はそれとは対照的に、いつも仕事の時に着ているシャツにチノパンといういでたちで、愛用のグローブ・トロッターを携えていたんです。
自分で言うのも何ですが、とてもシックでクールに見えたと思いますよ。
とは言え、まだ24歳でしたから、ボブ・ゲルドフは私を見て「君みたいな女の子がロンドン行きのファーストクラスにチェックインして、どうするつもりだ?」というようなことを言ったんです。
そこで私も「大スターがそんなド派手なかごをいっぱい持って、どうするつもりなんですか?」と言い返しました。
そのかごは妻のパウラさんへのお土産だったそうです。
ボブが私に目をとめたのは、地味なブロンドのせいではなく、ブルーの立派なグローブ・トロッターのトラベルケースのおかげだったことは間違いありません。
こうしてトラベルケースがきっかけで意気投合し、私たちは今も友人です。
結婚にもグローブ・トロッターがひと役買ったというのは、本当ですか?
本当です。
と言っても、女王陛下のようにハネムーン用の鞄に使ったということではありませんけれど。
ボーイフレンドのイヴォ(今の夫です)と一緒に、エジプトやスキー旅行に行ったのですが、イヴォはグローブ・トロッターをふたつ持って来ていました。
小さなブリーフケースと大きめのスーツケースで、今も愛用しているものです。
私はグローブ・トロッターの鞄を持たない人とは結婚できなかっただろうと思うので、このことが私の心を動かす理由のひとつになったのは確かです。
それから彼の家も、理由のひとつですが……。
グローブ・トロッターの鞄は、今もお持ちですか?
もちろんです。
フィナンシャル・タイムズ時代から使っているものは、大きさが手ごろで、長めの週末旅行にぴったりなんです。
実は使い過ぎてハンドルのレザーが擦り切れてしまったので、アルバマール・ストリートにあるショップに持ち込んで、工場に送って修理してもらいました。
こういうところは強力なセールスポイントですね。
製品の寿命を長くする努力をしているブランドは素晴らしいと思います。
低コストで作り、計画的に陳腐化してすぐダメになるようなものよりも、こちらの方が絶対にいいですよね。
20代前半に買ったトラベルケースを、50代になっても修理してもらえるなんて、本当にうれしいことですし、心から満足しています。
しかも私にとって今もお気に入りで、喜んで使い続けられているということは、グローブ・トロッターのデザインがいかにタイムレスであるかをよく物語っていると思います。
鞄をほめられることは、よくありますか?
ほめられるというより、無言の連帯感のようなものを感じることはあります。
グローブ・トロッターを持っている人に出会うと、お互いに目配せしたり。
グローブ・トロッターを持っている人は、冒険心が旺盛ですよね。
旅行が好きで、教養があって、アーネスト・ヘミングウェイ、マーサ・ゲルホーン、マイケル・ルイス、P・J・オロークなどの作品が好きで。同好会のような感じですね。
荷造りはどんなふうにしますか?
困ったことですが、私は非常に荷物が少なくて、夫と話が合いません。
私は大量のアンチエイジング化粧品さえ必要なければ、機内持ち込み手荷物だけで十分なんです。
ギリシャにバカンスに行くのに、ビキニ、カフタンドレス、着替え用のパンツだけを持って行ったこともあります。
ところが夫のイヴォは、ビクトリア朝時代の探検家ですか、というほど荷物が多いのです。
私の4倍はあります。
去年はゴアに行きましたが、イヴォの帰りの荷物には、油絵具がいっぱい入った木箱、携帯用のイーゼルとイス、水彩画の道具一式が入っていました。
私には荷物を増やさないための秘訣があるんです。
旅行に行くときに荷造りを終えたら、出発前に一度開けて、そこから3分の1を抜き出すんです。これで失敗したことはありません。
旅に必ず持っていくものは?
耳栓、スマートフォン、サングラス、リーディンググラスです。
重ね着できるものも、あると役に立ちますね。
10月ころだと、日中に外を散策するときは暑くても夜は寒いこともありますから。それからキンドル。
紙の本の方が好きですが、追加でキンドルがあるととても便利です。
ノートも持って行きますが、たいていはスマートフォンにメモします。スマートフォンだけで記事を書くこともありますよ。
私は書くのが速くて、旅行の記事などは帰りの飛行機の中で書きたいのです。
原稿は新鮮なほどいいと思っていますから。
帰り道なら、まだ現地の空気や香りの感覚が残っていて、それが文章に出ることがあるんです。
いちばん最近、グローブ・トロッターを持って出かけた旅は?
大西洋を船で横断しました。
素晴らしい旅でした。
クイーン・メリー2で行われた「2019年洋上のチェルトナム文学祭」の講演者として招かれたのです。
ニューヨークからサウサンプトンまで1週間の航海で、たくさんの乗客が、特別なイベントに登壇する作家やジャーナリストの話を聞きに集まっていました。
せっかくなので、私はこの機会にグローブ・トロッターを新調することにしました。
それまでグローブ・トロッターと言えばネイビーブルーしかないと思っていたのですが、お店に行ってみると、本当に様々なカラーがあるのですね。
そこで見つけたのが、とても美しいバーントオレンジのトラベルケースをふたつです。
とてもきれいな色なので今は自宅のインテリアにしています。
寝室にディスプレーしているんですよ。
クイーン・メリーの中でも、どれほどたくさんの人にほめられたかわかりません。
まるで映画スターになった気分でした。船旅は何もかもがエレガントですね。
クラシックな雰囲気やゆったりとした時間の流れがとても好きです。ひとつ感動的な話があります。
私の父と母はオックスフォードの学校に行っていたのですが、1963年にアメリカに移り住みました。そのときに乗った船がクイーン・メリーだったそうなんです。
ニューヨークに到着したときの父の写真がありますよ。
その名を受け継いだクイーン・メリー2で私が今度は復路を航海したわけですから、達成感がありますね。
次はどこへ行きますか?
けっこう予定が詰まっています。
まず休暇を取ってムジェーヴに行き、スキーをしながら2週間ほど過ごします。
そのあとイスタンブールとベネチアで、制作中のドキュメンタリーの撮影があります。
もちろん新しいオレンジのトラベルケースも一緒ですが、実は最近「グローブ・トロッター・ターンテーブル不安症」ぎみなんです。
グローブ・トロッターのファンはきっと誰もがそうだと思うのですが、飛行機から降りるのが遅くなると、とても不安になるんです。
私のあのすばらしいバーントオレンジのトラベルケースを、誰かが荷物のターンテーブルから盗んで行くんじゃないかと心配でたまらないんですよ。マイクロチップでも付けようかしら。
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